ここはどこだ。 見渡す限りの暗黒、動く事もできない。 ひどく寂しく、苦しい、何故私がこんな目に遭わなくてはならないのか。 しばらくして、ふと理解した。 これは夢、悪い夢だ。 ならば覚めよう、こんな悪夢は見たくない。 全ては、夢──────── 「………ん。」 目を開けると見えたのは天井、それもよく見慣れた。 ……宿屋…か。 とにかく、起きないと。 「───ッ!!」 少し体を起こした所で腹部に激痛が走った。思わず再びベッドへ仰向きに倒れこむ。 「がっ・・・ぁ。」 痛みはなかなか引かなかった、ようやく治まった後、改めて思い知らされた。 夢じゃ……なかった。 集落が襲撃された事、私が刺された事、そして、クイナが…… 夢ではない、全てが現実。 私は── 「入るぞ。」 3回のノックの後、入ってきたのはシュラ。 「具合はどうだ。」 「…最悪だ。」 「そうか、ショウ、少しいいか?」 「?」 私の返事を待つ事無く、シュラはこちらに歩み寄ってきた。  何が起こったのかわからなかった、世界が回って、体が浮いたと思ったら壁に激突していた。 それでようやく、左頬を殴られたのだと頭が理解した途端、強烈な痛みが走った。 「馬鹿野郎!!」 「何であんな所にいた! 俺が偶然見つけたからいいものの、お前、死にたいのか!!」 初めてみるシュラの本気の怒り。 「彼女が、クイナがいたんだ。」 怖い、この先を言うことが、聞いたら自分が自分でいられなくなる。そんな気がするから。 「シュラ!! …その、彼女は……」 「俺が行った時、あそこにはお前しかいなかった。」 「な…そんなことはない。彼女はいたはずだ、し、死んで…なんか、死んでなん、か、…………いない。」 そう、彼女は、死なない、死ぬはずが…ない。 「今、集落の方では復興が進んでいる。結界は戻った。」 「……………。」 「ショウ、よく聞いてくれ。」 やめろ 「お前が倒れていた地点から。」 やめてくれ 「一人の焼死体が見つかった」 彼女じゃない、他人だ。 「その死体に」 うるさい 「握られていた遺品だ。」 五月蝿い!! シュラが手を差し出す、駄目だ、あれは見てはいけない、見たら全てが終わってしまう。 …見るな、見るな、見るな、見るな!! 「──────────っ」 彼の手には、最愛の人の名前の入った、この世にたった一つの、リングが乗せられていた。