目が覚めたらROの世界だった 信じられない。 あ、そうか、あれだ。ものすごく手のこんだドッキリだ。 最近のテレビ局は本格的だなぁ、はっはっは。 生アサたんだよ羨ましいだろこんにゃろう。 怒らないからカメラの人出ておいでー。 「おーい、どうした?怪我でもしたかー?動けないかー?」 飄々と言いつつも再び彼女の手が霞み、今度は青の骸骨みたいなの…(これはソルスケか?)を三体同時に斬り倒す。 オレの頭は現実を認識する事を拒んでいるかのように、後ろ頭が痺れて全然思考が働かない。 「ったく、しょうがねぇな…」 いつまでも動かないオレの首根っこをぐいと引っ張りあげる彼女。 「へ…!?うわ……わぁああああぁっ!?」 丁度猫の首根っこ捕まえた格好でそのまま引きずられていくオレ。 民家の軒先を失踪し、階段をひとっとびに越えて連れてこられたのは街を一望できるような高台の上。緑に囲まれた美しい街だった。 「ボクはルケル。見ての通りの冒険者」 赤毛のアサシン…ルケルは先ほどまでの戦闘の余韻すら感じさせず飄々と言った。 「だいじょぶかー?おーい?生きてるかー?」 オレの目の前でひらひらと手を振ってみせる彼女。 「い…生きてる。」 どうにかこうにか搾り出せたのはそれだけだった。 「怪我は?」 言われて、改めて自分の身体を見る。 痛いところはない、動かないところもない、変なところもない。 「大丈夫…ありがとう。助かったよ…。」 「そっか。そいつはよかった」 言葉尻は乱雑だが、ニコリ、と笑った彼女はなんていうか…とても魅力的だと思った… 「あんま大きなテロじゃなかったみたいだなぁ。」 なんて、眼下の街を見ながらいう彼女。喧騒は次第に納まっていった。 オレは生返事しか返せずにいた。 「お前さ、名前は?」 名前…そうだ… 「ケイタ。サトウ、ケイタ」 言った後、やっぱこの場合、苗字が後になるのかって悩んだけど、まぁどうでもよかった。 そんな事を考えていると段々と頭が働いてくる。 「あ…あのさ?ここ…どこだ?」 「あ?フェイヨンだろ?どうした?頭でも打ったか?」 ひょいとしゃがみ込むと目をあわせて、両手をオレの頬に当てて、何やら探っている 不覚にもドキリとしてしまう。 「ケイタ。お前、なんであんなとこにいたんだ?」 「いや…あの、オレも何でなのかわかんないんだ…」 それが正直なところだから他に言いようもない。しばらく真顔で考え込んでるルケル。いや、手離して欲しいようなそうでもないような… 嬉しいやら恥ずかしいやらちょっとドキドキ。 しばらく考え込んでた彼女はオレの手を引いて立ち上がらせながら言った。 「ケイタ。とりあえずウチに来い。お前、記憶がちょっと混乱してるからな。なぁに、腕のいいプリーストとウィザードがいるんだ。一応診てもらおう」 まだ、頭に靄がかかったように思考がハッキリしない。何か目の前にすごく大切な事があるような気がするのに見逃している… ただ、断ったところでアテがあるわけでもない。ここは彼女に甘える事にした。 何かが喉まで出掛かっている違和感を感じながらも彼女に連れられ、魔物の掃討が終わったフェイヨンの街を歩いて行った。