街の中は既に大分落ち着きを取り戻していた。 フェイヨンということで弓手が多いのだろうか。マフラーを巻いた男の子や青い服の女の子が応急手当の手伝いをしている。 やっぱアチャたんの服の裾って短いよな…。あ、もう少しで見えそう… とか思って見てたら、気付かれて、にっこり手振られた…。ちょっとこっぱずかしい。 「ルケル。あれってやっぱアーチャーなのかな?」 照れ隠しにとりあえず訊いて見る 「ああ、あの格好してるなら間違いないだろ。」 どうやら彼女によると、冒険者の衣装は各ギルドごとに決められた正装のような物らしい。 遠くから見てもどういった職業のギルドに所属してるのか分かるし、おおよその能力も分かるという利点があるそうだ。 敢えて普通の町人が冒険者の格好をしたり、他の職業の制服を着たりする事はまずないそうだ。 プロンテラ衛兵や街の衛兵。商店によっては同じように制服を定めているところもある。 格好を見ただけで、何者なのか分かるという寸法だ。 「そうなると、ケイタはアルベルタの商人組合に所属してるんだろうな」 と言われ、ようやく自分の格好を見下ろす。 着込んでいたスーツではなく、チョッキにタートルネックのシャツ。落ち着いた色調のズボン 確かに、これは商人の衣装だ。そして、肩掛けにした大きなカバン。 「そうか。ケイタの冒険者証とか見ればどこの誰かくらいは分かるかもしれないな。」 「冒険者証?」 「ああ、これさ」 とルケルは自分のポーチからカードを取り出す。そこには STR−B AGI−A Vit−E INT−E DEX−C Luk−D Class:Assasin LV:A JOB−LV:S とか馴染みのあるステータスがずらっと並んでいた。数字ってわけじゃあないんだなぁ… そうなると、気になるのは、自分のステータスがどうなってるのかだ。 服のポケットを一通り漁って、冒険者カードがないのを確認。 次に大きなカバンを開けて……… え…? な…これって… 「それ」が何なのか理解した瞬間、俺は即座にカバンを閉じた。 「どうした?ケイタ?」 ルケルが心配そうに聞いて来る。間違いなく俺の顔は真っ青になってるだろう 「ごめ…何でもない、とりあえず、やっぱ俺、もう行かないと…ありがと!」 そういうと、俺は一気に走りだした。 「おい!ケイタ!!」 ルケルの呼ぶ声が背中に届いたが振り返らずにひたすらに走った。 カバンの中にあったのは…… 数十本もある「古木の枝」だったからだ。 走って走って、ともかく人のいない所まで走って。 いつのまにか、ポリンやら動く樹がいる場所へ出た。おそらく街の外へ出たのだろう。 木陰に入って、とりあえず座り、周りに誰もいない事を確認すると俺はあらためて商人のカバンを開けた。 まず、俺の現在の持ち物 マインゴーシュが一本。ガード。アドベンチャースーツ。頭巾。シューズ。フード。 典型的な初心者装備だ。 そして、合計で27本の古木の枝。それと、着替えの服。少しばかりの干し肉と… 着替えの服は…商人の衣装の物が一そろい。 そして、 「これって……」 RO生活の最後の方で行った街で見かけた衛兵の服だった。 企業都市リヒタルゼンの街で一番大きな企業の警備員が着ている物と同じなのだ。 ルケルの説明が正しければ、俺がこの服を持っているって事は俺は商人であると同時にリヒタルゼンの衛兵という事か…? 服を見ているとポタリ、と封筒が落ちた。 何か、中身を見るのが怖かった。 そこに、俺がテロの犯人だと書いてあるんじゃないかと不安で仕方なかった。 だが、中を見ない事には状況を知る事は出来ない。 封筒は開いていた。 震える手で中身を取り出し、中身を取り出す。 そこには 「1500。フェイヨン東。226−115。連絡員に補給物資を届ける」 と書いてあった。 この数字は、時刻と座標…という事か。 やっぱり、初心者装備の俺が枝を30本近くも集めるのは不可能ではないかもしれないが、無目的にそんな事をするはずもない。 つまり…俺は、あのフェイヨンでテロをしていたか…その片棒を担いでいたという事だ…。