あのフェイヨンにいた人達は、生きていた。 ゲームでも何でもなく、いつもの世界と変わらない生きた人達だった。 殺し合いは当たり前だが、喧嘩すらした事がない俺があの人達を殺そうとしていた? テロを命がけで食い止めたルケルや衛兵や、事後の救済に奔走していたアーチャー達が俺の事をどう思うかなんて分かりきった事だった。 「…う…」 何をしでかしたのかを悟った時、思わず吐き気を催して… 気がついた時には胃の中身がなくなるまで吐いていた。 口の中が苦いのは胃液まで吐き出したせいか。 しばらくの間、呆然としていた。 これからどうする? 手の中にまだあった皺だらけにしてしまった手紙を見る。 「……行ってみるか…」 この枝を渡すのか、それともテロなんてバカな真似はやめろと説得するのか。 どうすればいいのかなんて分からないけど、行かないといけない。 この世界の俺が何者で、何をしようとしていたのかを知らないといけない。 俺は荷物をまとめ、立ち上がった。 サトウ=ケイタ ♂ STR:C AGI:C Vit:F INT:E DEX:D Luk:F Class:Merchant LV:E JOBLV:A 着替えの商人服に冒険者カードがあった。自覚はないが、どうやら俺はAGI型の戦闘商人らしい。 これを見る限りだと、装備はともかく、JOBはかなり高レベルっぽい。 このベースレベルEがどの程度かはわからないけど… 目の前にいる動く樹の化け物(おそらくウィロー)にマインゴーシュの切っ先を突きつけ、一息に切りつける。 驚くほど、身体が軽い! 吸い込まれるように、という表現がぴったりな程、突きこんだマインゴーシュの切っ先はウィローに突き立った 樹を断ち割る感触が腕に伝わり、 「グォオオオオオオオッ!?」 いやな断末魔をあげるウィロー。俺はそいつの身体を一気に貫いていた。 つまり、今の俺はウィロー程度ならマインでも一撃で倒せるくらいの実力を持っているという事か。 樹液と木屑を拾い、次に確認しなくてはならない事を考える。 次は時刻の確認方法と座標の確認方法だ。 現実世界でなら、時刻は携帯なり腕時計なりで確認出来た。 腕まくりしてみると、そこには腕時計のような物があった。 画面にはROでよく見たミニマップが浮かんでいて、時刻も表示されていた。現在時刻は14:00 その下の方に、細長いウィンドウがあって、その両脇の延長線上にそれぞれボタンがある。 ボタンを押してみた。右を押すと細長いウィンドウに『PT会話』『ギルド会話』と出た。 なるほど、こうしてパーティメンバーやギルドメンバーと会話出来るわけだ。 そして、左のボタンは回して見ると『/where』などの馴染みのあるコマンドのいくつかが出てきた。 ここで押せば… 思った通り腕時計のミニマップに現在地の座標が表示された。 これで、座標も分かった…。 後は行くだけだ…