何か小さな球体の中に押し込められているような感覚。 あたしは膝を丸めその中で漂うようにゆっくりと回っていた。 ―――こぽっ 温かな水のようなものを吸い、肺を満たし、吐き出す。 あれ…あたしは… 急速に意識が戻り、置かれた状況にパニックを起こす。 膝立ちにもなれない狭い空間。 体の周りを満たすのは生温い液体―――あたしはその中に全身浸かっている。 その中で息はできているようだが、はっきりしてきた意識が水中での呼吸を拒否する。 その水は急速に温度を増し、熱い水が肺をチリチリ焼きはじめた。 熱い…助けて… あたしは夢中で体を包んでいる球体を叩いた。 薄ぼんやりとその外が明るく光っている。 外へ…外へ…! 叩く拳のあたりから球体にヒビが入り、球体全体へ広がっていく。 苦しさに体を焼かんばかりに熱を帯びた水を飲み込んでしまい、ぎゅっと閉じた瞼の裏が赤く染まる。 意識を手放しかけた時、突然球体は音を立てて割れた。 ********** ごはっ!げほっ……がはぁっ…… とても女子が立てる音とは思えない激しい咳き込みと共にあたしは地面に崩れ落ちた。 肺に溜まった水が口や鼻から逆流して流れ出す。 この際、周りからどんな風に見えてるかなんか気にしていられない。 膝と肘で体を支え、這いつくばる様な姿勢で新鮮な空気が呼吸を整えるのを待った。 ガンガンと頭が割れるような耳鳴りに涙が出る。 ようやく咳が止まった時には、運動した後のように全身が重かった。 涙と少しドロッとする水に濡れた顔をぬぐいそっと目を開くと、固い石畳の上にいることがわかった。 「え…なに…これ…」 状況が理解できないまま、ゆっくり体を起こす。 濡れた髪とパジャマが体に張り付いている。きっとひどい格好をしているに違いない。 「あー…えっと、あんた…誰?」 「ほぇ?」 いきなり真横で聞こえた声に間の抜けた声を出す。 「………」 「………」 そいつとあたしはしばらく無言で見つめあった。 しゃがんだ姿勢のまま本当にポカーンとした表情であたしを見ているそいつの首元から覗くのは細いチェーンメイル。 革の厚手のズボンの腰には使い込んだ剣帯と飾りのない長剣。 胸を覆うようにかかる布にはどこかで見たことのある紋章… 「…ナイト?」 掠れた声でつぶやくあたしにそいつはこくんと肯いた。 「なんでナイトが?ってかここドコ?―――え、どゆこと?コスプレ?」 訳がわからずあたしはキョロキョロと辺りを見回した。 砂色のレンガが敷き詰められている地面から目を上げれば、古いヨーロッパの街のような ハーフティンバーの可愛らしい家並み、遠くに見える大通りには多くの商人がカートを並べている。 「プロンテラ…」 あたしの独り言にそいつはもう一度肯いてから口を開いた。 「…で、あんたは誰なんだ?なんでここに?」 「そんなのあたしが知りたいよ…なにこれ?ゲーム?夢?あんたは…?」 「オレの名前は…」 「―――エッジ」 あたしがいきなり自分の名前を当てたもんでそいつはまたポカーンと口をあけた。 そう、そいつの名前はエッジ。苗字などないただの“エッジ”。レベルは74。 「なんで、オレの名前を…?」 「書いてある、そこに」 あたしは彼の頭上を指差した。笑っちゃうほど不自然なものがそこに見える。 『エッジ/Lv.74/Knight』 半透明の薄い板のようなプレートが彼の頭の動きに合わせてヒラヒラと揺れていた。 多分、というかどう見てもステータスウインドウ。 彼にはそれは見えていないようで、空を見上げて眉根を寄せた。 「…まぁ、いいや。それであんたはどこから湧いて出た?オレのペットは?」 「ペット?」 彼はあたしのお尻の下を目で示した。 そこにあったのは鼎というか、カセットコンロのような小さな五徳にアルコールランプの残骸。 火はあたしが漬かっていたドロドロする水で消えてしまっている。 「あたしは―――なんか変なボールの中で水中に閉じ込められてて…」 その前がどうしても思い出せない。パジャマを着ているから多分眠っていたんだろう。 うつむいたあたしの方にいきなりエッジが手を伸ばした。 「ひゃっ」 思わず首をすくめる。武器を持ってる鎧男がいきなり無言で手を伸ばしてきたらそりゃ怖い。 ゲームオタクの女子高通いだから正直オトコに免疫もないし。 ましてやあたしは薄いパジャマ(しかもびしょ濡れ!)一枚だし、ココはプロンテラの裏通り。 そんなあたしのパニックに気付いた様子もなく、エッジはあたしの頭を鷲掴みにした。 そして… ―――ぱかっ 間抜けな音と共にあたしの頭にしっかりハマっていた何かが外れ、中の水をまたかぶる。 うぷっ…気持ち悪い… ごしごしパジャマの袖口で顔を拭って見たエッジの手には白いヘルメットのようなもの。 ―――あー懐かしいな。ラグナ始めた頃こんなの持ってたっけ…  そうそう、初心者が装備できる物の中じゃ結構DEF高かったんだよね、あれ。 「装飾用卵殻、だよね」 「…と言うより本物の卵の殻だな」 エッジはグシャッと殻を握りつぶして大きなため息をついた。 ということは、あたしは本物の卵の殻をかぶっていたわけで。 ずいぶんおマヌケな姿だったろうと思うけど問題はそんな事ではなくて。 この状況を整理すると、だ。 1)ドロドロとした水の詰まった球体の中にいた 2)なんだか熱くなって球体を叩き割って飛び出した 3)目の前にステータスウインドウ付きのナイトがいる 4)そいつはペットを探している 5)お尻の下には何かを載せて温める道具がある 6)頭に卵の殻をかぶっている ここから導き出される答えはひとつ。 ―――それは… 「あー、っくそ、騙された!」 エッジは突然頭を抱え、髪をわしゃわしゃ掻きむしった。 「…だよな、……の卵があんな安く買えるわきゃないんだよな…」 あー、やっぱり。 「やっぱ、あたしキューペットなのね…」 あまりの状況のおマヌケさに、あたしもまたペタンと座り込んだ。 まー、これも夢なのかもしれない。 でもさ、ゲームしてれば誰もが一度は“目が覚めたらラグナの世界だったらどうする?”って考えるじゃない。 自分の持ちキャラとは言わないけど、少なくとも冒険者になりたいって思うのが人情。 百歩譲っても敵ボスクラスのモンスターとか、ホルグレンみたいな有名NPCとか。 夢なら夢らしくカッコ良かったり主役だったりさせてくれればいいじゃない。 なんで着古したヨレヨレのパジャマ姿で。 頭からドロドロの水をかぶって。 マヌケにも頭に卵の殻をくっつけたままで。 ―――はあぁっ エッジより大きなため息をついてあたしは彼を見た。 茶色がかったボサボサの髪、悪い人じゃなさそうだけど強くもなさそうな童顔。 平たく言えば特徴のない平凡な容姿……登場人物まで夢のない造形ときたもんだ。 「…で、どうするの?」 エッジはあたしの言葉にハッと顔を上げた。 「―――そうだ!逃げないうちにあいつを捕まえて金返してもらう!」 ガシャッと鎧の音をたてながら立ち上がったエッジは踵を返すと大通りの方へ駆け出した。 「え、ちょっと待ってあたしは?」 「待ってろ!」 「待ってろって…ちょっ……ウグッ!」 呆然と見送ろうとしたあたしの首が勢いよく絞まる。 ちょっとタンマ!タンマ!タンマ! そのままズルズルと数メートル引き摺られて前のめりに石畳にダイブする。 前方を見るとエッジも派手に後ろ向きにすっ転んでいた。 彼も振り返り、十メートルほど離れたままお互い顔を見合わせ……その間にあるものに気がつく。 二人の間にピーンと張ったもの―――それは鎖。 エッジの右手首の太い鉄の輪からそれは伸び、あたしの首に繋がっている。 慌てて首に手をやると、見事に太い鉄の輪がそこに嵌っている。 「ちょっ…何これ…すぐに外してよ!」 「知らねーよ!なんだよコレ…」 エッジも悪態をつきながら起き上がり右手をグッと引いた。 ベシャッとあたしはもう一度石畳にダイブした。 「痛っつー…」 「あ、ごめ…」 さすがに濡れて泥だらけになったパジャマで転がるあたしを哀れに思ったか、あっさり謝ってエッジは近寄ってきた。 エッジが二三歩近づくと鎖はスーッとその色を失い、半分まで近づくとかき消えた。 「え?」 試すようにエッジはまたあたしから離れ、ある程度離れた所で鎖はまたあたしを彼の右手に縛り付けた。 「離れると鎖があたしを引っ張る…ってこと?」 あー、キューペットってそういう仕組みだったっけ? 「そう…みたいだけど聞いた事ねーよ、そんなの…」 エッジも初めて知ったようで、近づいてすっかり消えた鎖を斬るように剣を振り回した。 当然剣は空を切るばかりで、斬れないと諦めた彼は汚いバッグから小さな卵の殻を出しパカッと二つに割った。 「じゃ、いいよ。卵に戻れ」 「へ?」 あたしの意見は聞く気ないようで、いきなり卵の殻を頭にギュウギュウ押し付ける。 「ほれ、戻れ」 ぎゅむぎゅむぎゅむ 「…戻れったら」 力任せに殻をほっぺたを両方から挟むように押し付けられてあたしは叫んだ。 「痛い痛い痛いっ!痛いって…!」 ―――あたしはポケモンかっつーの! 彼の手を払いのけると、彼も薄々ムリな事に気が付いていたようで(ならやるな!)あっさり諦めた。 「んじゃついて来い、直接そいつに引き渡す」 エッジは振り返りもせず大通りへ歩き出した。 ひ…引き渡すってあたしの意思は!?またどっかであの卵の中に入れられちゃうの!? 石のように固まったあたしに鎖の張力で気が付いたエッジはようやく振り返った。 「どうした?」 「や…やだよ!あんな苦しい思いすんの!ってか…こんなカッコで大通り歩けない!」 言われて初めてエッジはあたしの散々な様子に気付いたようだった。 ただでさえ量の多いクセッ毛は濡れてグシャグシャになってるし。 もう2年も愛用してるパジャマは元々ヨレヨレで、転んだ弾みに薄かった膝が破けてる。 中世風の世界観はリアルに街の衛生状態にも反映され、裸足の足の裏や転んだ胸のあたりは泥だらけ。 オマケに濡れたパジャマは結構肌が透けてしまう状態でもあるし。 こんな事ならいいパジャマに換えておけばとか、かわいいパンツ穿いていればとかアホな事も考えてるのに。 ファンタジー世界でどう見ても浮浪者か変質者にしか見えない姿を意識したら情けなくて泣けてきた。 「うぅー…」 しゃがみこんだらもう涙が止まらなくて。 風にあたって冷えてきた体と、転んだ弾みで打った肘がジンジンと痛んでくる。 「…なんだかよくわからないけど…泣くな」 さっきまで卵であたしの頬をグリグリやってたくせに、エッジは慰めようと思ったらしい。 「うぅ…わかんないくせに…痛いのに…寒いのに…」 冷静に考えれば彼の所為ではないけれど。 八つ当たりする対象が彼しかいないのだから仕方ない。 「ほら…喰うか?」 目の前に何か緑色の物が差し出され、顔を上げた瞬間口の中に何かが押し込まれた。 むぐっ…苦い。 「っ…今何を…」 驚いて吐き出すとエッジは首をかしげた。 「何って…エサ」 「エサって…こんな時に何考えてんのよ!人をペット扱い…って…まさかペ、ペ、ペ…」 あのイモリの丸焼きみたいなペットフードを食べちゃったのかと一瞬青くなる。 「いや、若芽」 ―――あー、よかった…いや、よくないけど… なんだか泣く気も怒る気も失せてあたしはエッジを見上げた。 今はこのヒトになんとかしてもらうしかない。どうも気が利かないし頼りないけど。 「―――それじゃ、あたしを売った奴を探しに行きましょ」 ********** 「お兄さん、ペットだからって大事に扱わなきゃダメよ」 テイミング商人のお姉さんはあたしのカッコを見るなり眉根を寄せた。 そりゃそうだ、エッジのマントを体に巻き付けてはいるけどあたしは裸足で髪も濡れてる。 「は、はぁ…」 「いるのよね、たまに。なつかないからって虐待したりヘンな目的に使おうとしたり」 「いや、最初っからこんな状態で…」 しどろもどろになって言い訳するエッジが可笑しい。 あたしが心配ないというように商人のお姉さんに微笑んでみせると、やっと彼女は本題に入った。 「で、今日は何の用?」 「あー、こいつの服ありますか?」 「この娘…ソヒー…ムナック…じゃないか、顔色いいもんね。アリス?かな?」 どうしてアリスの後にクエスチョンマークがつくのかはちょっと気になるけど、頷いてみせる。 「中古のでいいです、お金あんまないし」 情けない事を言うエッジに、お姉さんは笑って頷いた。 「…まぁ、虐待されてたペットを引き取ってくれるような人に高くは売らないわよ」 なんか美談方面へ勘違いをしているような気もするけど黙っておく。 サイズあるかな?と呟きながらお姉さんが店の奥に消えるとエッジは頭をかいた。 「…アリス、ねぇ?」 実は店に入る前に、あたしが何のペットに見えるかいろいろ考えてた。 人型のペットと言えばムナック、ボンゴン、ソヒーにアリス…あ、ジルタスもいるか。 そこで“オークウォリアー”と言い足したエッジの頭は当然叩いておいた。 彼の話によると同じペットでも個体差があるみたいで、背の高いのもいれば太ってるのもいるらしい。 あたしにも判断つかないし、お店の人に当てさせて決めようって事に落ち着いた。 ま、女子としてはボンゴンって言われるよりアリスの方が嬉しいわけで。 こんな状況にも関わらず、あたしはつい頬が緩むのを隠せなかった。 「良さそうなのがあったから、ちょっと着てみて」 奥から手招きしたお姉さんにあたしは着いていく。 あまり離れすぎると鎖が出てくるからエッジもそれとなく距離を詰める。 倉庫を兼ねている小さな部屋の中で汚れたパジャマを脱ぎ、紺色のワンピースに着替える。 腰のあたりがキツい気もするけど、どうもアリスってのは全体的に小柄らしい。 反対に胸のあたりはだいぶ余ってるんだけど。 まぁ、男どもの考える愛らしいメイドのイメージって言えばそういうもんだろう。 白いエプロンをつけると出来の悪いコスプレにしか見えないけれど、エッジやお姉さんも含め 見る人みんなコスプレ状態なんだからそれも目立たないのかもしれない。 「あらー、見違えたわ。可愛いじゃない」 お姉さんが髪を拭いてくれながらニコニコと笑う。 多分彼女の目には本物のペットとして映ってるんだろう。 当然、ペットとしての服を探しに来る前にあたしの入った卵を売った怪しい商人を探した。 エッジによると噴水の近くで店を開いていたらしいけど、もうその姿はどこにもなかった。 他にも相場よりだいぶ安いアイテムもあったみたいで、最初から怪しいアイテムを売りつけ逃げるつもりだったようだ。 近くをいろいろ探してみたけどそいつの手がかりは掴めずじまい。 夢中で探し回るエッジは鎖の事をすっかり忘れて離れすぎ、一度鎖で通行人をラリアットしてしまう始末。 そうじゃなくてもあたしの姿はかなり目立つし、まずは見た目をなんとかしようという話に落ち着いて現在に至っている。 最初はペットじゃなく、ノビの服でも調達して冒険者のフリをしようと提案した。 だけどエッジの話では資格制の冒険者の制服(あれは貸与された制服なんだそうだ)を一般人に売る店はなく、 偽造は重罪にあたるらしい。その制服のお陰で収集品を買い取ってもらったり、OCが適用されたりするんだって。 それじゃ本物のノービスに…と思ったら初心者修練場は半年間の寄宿学校、入学金も必要との事。 そもそもエッジと(物理的に)離れられないのに寄宿舎に入る事なんてできそうにない。 次善の策としてNPCとか普通の街の人の服…と思ったけど、いつこの状態が解けるかわからないのに その間、街の人を連れて狩りになんていけないし、どんな関係かと聞かれるからギルドの仲間がいるという宿にも 顔を出せないとエッジに断られた。 ―――結局、悔しいけどペットを装うしか手っ取り早い手段はなさそうなのだ。 あたしはお金なんか持ってないから当然エッジが支払いをして店を出る。 大通りを歩きながらチラチラ横目で通り過ぎる人を見るが、さっきほどこちらに注目する人はいない。 「でもホントお金持ってないんだねー」 「うっせ」 しみじみ言うあたしをエッジは横目で睨んだ。 お財布なんて覗き込まなくてもステータスウインドウに書いてある。 ―――8456z あー、なんでこんなド貧乏のペットなんかになっちゃったんだろう。 「で、これからどこに行くの?」 紫に染まって行く空を見上げて聞くと、エッジは困ったように振り返った。 「連れと宿取ってあるから戻るけどさ、お前もっとアリスっぽく喋れない?」 「なんで?」 「もう一人分宿代払う金ねーし」 「ビンボー」 エッジはムッとしたように唇を尖らせた。 「あのな。誰のせいで余計な出費になったと思ってんだよ」 「んなこと言われたって」 「…お金貯めてさ、やっと念願のペットゲットしたと思ったらさ…アリスの服は3000zもするし…」 あーもう、コノ人案外根暗かもしれん。 「―――はいはい、すみませんねご主人様」 ヤケクソ気味に言うと一瞬エッジはあたしを見て立ち止まった。 「ん…?」 「…まぁ、おまえもオレの欲しかったペットに似てるって言えば似てるか」 アハハ、と柔らかく笑ってエッジは歩き出した。 不覚にもその笑顔にドキッとしてあたしは顔を赤らめた。 ―――それってアリスみたいにかわいいってこと? 「そういや、お前の名前は?」 「ミ―――ミサキ」 ふーん、と頷いてエッジは喰う?とまた例の若芽を取り出した。 「アリスなら白ポじゃなかったっけ?」 「アリスならね」 ん、なんか引っかかる言い方。そういや最初っからこいつ若芽出してたような。 「ちょい待ち、エッジの欲しかったペットって…?」 エッジは“ここだ、ここ”と小さな食堂兼宿屋の扉を開いた。 「あれ、言ってなかったっけ?」 “いらっしゃーい”という声に軽く手を上げてエッジは振り返った。 「デビルチ。……ちっこい悪魔だよな、ミサキ」 「んなっ…!」 「はい、アリスアリス」 反論を遮るようにそう言ってエッジは食堂へ入っていった。 カレーだろうか。 目が覚めてから何も食べてないお腹が一時休戦を呼びかける。 「…お供しますわっ―――ご主人様!」 ********** 何が起こったのか考えるのも、鎖を切る方法を考えるのも後、後。 きっと、お腹いっぱいになったらいい案も浮かぶはず。 うん、きっとそう。 END