『ルフェウスー、聞こえるかー?  ちょっと悪いんだけど手伝ってくれー』  オーラを吹いて家ポタで帰り、露店をしているであろうルフェウスにWISを送る。ラルが いればあいつでも構わなかったのだが、いつもラルはどこかかしこに出かけていることが多く 今日も家に居なかった。 『何?って、レベル上がったんだ。おめでとー』 『ああついさっきな。サンキュ。  でさ、荷物の受け渡し頼みたいんだよ。  転生したら金ないし、倉庫も開けないから。  大丈夫か?』 『うん。僕は今いつもの場所にいるから、そっちから来てもらって良い?  で、リディックの落ちるところって大聖堂の裏手だったよね?転生確認してからそこで待機、 で良いんだよね?』 『ああ。じゃあ今からそっち行くわ』  そう言ってWISを切ってノビ育成用の装備を手に取った。 「おおー、光ってる光ってる」  ルフェウスの場所にたどり着けば、あいつはいつもどおりホムのエサをやりながら露店を開 いていた。 「間近で見るとやっぱり目立つねえ」 「リアルでオーラっての、慣れれば大丈夫なのかもしれないが目に優しくないな」 「蝋燭代浮くかも?」 「あほう、それじゃあ寝れねえよ」  他愛の無い雑談を交えながら、オレは装備品をルフェウスに手渡した。 「ノビの壁しよっか?」 「いらんいらん。製薬ケミに壁させるほどよわっちくは無いさ」 「レベル1なのにね。  で、すぐに行くの?」 「ああ。フィーナから連絡来る前にポタとって置かないとやばいからな」 「それはそうだ」  あはは、と笑うルフェウスを背にオレはジュノー行きのポータルを開いた。 「いってらっしゃい」  その言葉に手を上げるだけで返し、オレは光の柱に入っていった。  ばか高い閲覧料を支払ってたどり着いたユミルの書。  初めて読むそれに、何か手がかりはないかと文章を目で追ったが有力な物は無かった。  後はバルハラに飛びヴァルキリーに会えば転生は完了する。  ユミルの書の置いてあった館内の地下の通路をたどり、若干迷いながらもたどり着いたユミ ルの心臓。ここからバルハラへ飛べる。そう思って、それに手を触れたオレにざわっとした妙 な感覚が訪れた。 「……何だ?」  言うなれば身体を分離させられるようなそんな感覚。だがそれもすぐに転移を迎えたため考 えが及ばないうちに消え去った。  一瞬の浮遊感の後に到着したバルハラにオレはきょろきょろと辺りを見る。空中に浮いた宮 殿。宮殿を支える柱の彫刻は複雑で物語を描いているようだった。  一歩足を踏み入れれば通路に佇む12の人影。それぞれの職を極めた人たちの姿だ。 「転生おめでとう!」  口々に賛美を送り、オーラ達成者を促す。ゲームでは転生はおろかオーラすら迎えていない のだが、きっと同じ台詞しか繰り返さないと知っていても一人ずつクリックしそうな気分だ。  通路の奥は明るく、白を基調とした装飾が辺りを包む。  そして奥には1対の翼と金の髪、左右の違う色を秘めた瞳の女性の姿、ヴァルキリーが厳か に佇んでいた。 「よくぞ来ました、イレギュラー」  ヴァルキリーはオレを見るなり、ふと顔を緩ませ微笑む。 「ヴァルキリーもマイアと同じでオレ達の事知っているんだな」 「ええ、あなたの他に我が元にたどり着いたイレギュラーはただ一人。もう1年以上も前の話 です」 「1年以上前というと、姐さん…ケルビムさんの事か?」  姐さんはオレがここに来た時には既にスナイパーだった。彼女もこの世界に来てから転生し たと言っていたから、その一人とは姐さんのことに違いない。 「今あなたが来て良かったと私は思います。  未熟な力を使わないよう警告することが出来るのですから」 「どういう事だ?」 「あなたのすぐ傍に魂を紡ぐものが誕生したでしょう?  彼女は貴方方にとっての渇望する鍵。しかし、それは諸刃の剣」  …魂を紡ぐ…、ソウルリンカーの事か? 「……どういう事だ」 「肉体に刻むのは魂の楔。未熟な力で無理に引き剥がせばそれがどういう事を起こすのか。  間違えたら、魂を壊すことにもなりうるのだと…」 「違う!  そうじゃない!」  ヴァルキリーの言葉を遮りオレは怒鳴った。 「……なんで、何でそれを姐さんに言わなかった!?  判れば、判っていれば!兄貴やリアが……あんなことにならなかったと言うのに……!」  オレは唇を噛み締めた。頭に浮かんだ映像はバンされたチェイサーとその相方のプリースト の笑顔、そして、プリースト――リア――の死体。  その言葉にヴァルキリーは哀しそうな光をその目に宿した。 「もしも、あのハンターがもう少し後に来ていたのならば、私はあの者に伝えることが出来た でしょう……。  ですが、貴方も知っていますね?  ソウルリンカーがこの世界に現われたのはいつだったかを」 「…………、  …ノーグ、ハルト……」  …そうだったんだ。早かったんだ。姐さんがヴァルキリーに会ったのは1年以上前で、その 頃には実装予定ではあったものの、ソウルリンカーは存在していなかったんだ。 「私の中に刻まれる知識に未来のものはありません。現在と過去を伝える事は出来ても、未来 を伝える事は出来ないのです。  誰でも良かったのです。イレギュラーがここに来てくれさえしてくれれば、私は伝えること が出来た…。だけど、来たのは貴方だけ」 「……」 「ですが、手遅れになる前でよかった。  伝えてください。彼女がその職を極めた時、私の元に来てくださいと。  それまでは決してイレギュラーに対しソウルリンクを行なわないということを」 「転生の出来ないリンカーはここには来れないと言うのに、か?」 「大丈夫です。この場に来れる者が同伴していたら。あなたや、かのスナイパーの女性が居さ えしたら、道を開くことが可能です」 「……判った、必ず伝える」 「では、あなたの達成した道にもう一つの新たな道をつなぎましょう。  今の肉体を捨て、新たな肉体へ」  ヴァルキリーが手をかざす。ふと訪れる暗転と浮遊感、そして喪失感。何かに突き落とされ たような感覚に恐る恐る目を開ければ、そこは大聖堂の裏手墓場の前だった。 「…ノービス、か」  自身の姿を見れば、それはいつもの黒の法衣ではなく黒味がかったノービスの衣装。  両手を握ったり開いたりして身体の動きを確認すると、以前の動きとは微妙な感覚の違いに 戸惑った。オール1って言うのはこういうことなのか。  などと自分の中で整理をつけていくオレの頭にこつんと何かが当たった。不審に思いつつも あたったものを拾い上げ、それがPT要請のバッヂだと気づいた瞬間声がすぐ後ろから聞こえ た。 「とうとう転生したな」  低い落ち着いた女性の声。聞き覚えのある声にオレは思わず振り向いて。 「け、ケル姐さん!?」  いるとは思わなかったその人物にオレは動揺を隠せなかった。 「なんで、姐さんがここに!?」 「それは、僕が伝えたからだよー」  ひょっこりと後ろから現われたルフェウスの姿。 「全く馬鹿者と言うべきか。MEプリーストが転生するなどどれほどの苦痛をその身に受ける か知っているはずだろうに」  呆れた顔の姐さんに、横で大きく頷いているルフェウス。 「ただ黙ってるって言うのは、やっぱり性に合わないしさ。オレにも出来ることあるのならや ってみようと思っただけだよ」 「ほう」 「ところで、これ何?」  そう言ってオレは先ほど拾い上げたバッヂを差し出した。 「決まっているだろう?お前のレベル上げに付き合うと言う意味だ」 「え、姐さんが!?」 「製薬ケミはよわっちいから、ケルビムさんにお願いしたんだよ」  皮肉を交えたルフェウスの言葉にオレは一瞬顔を顰めたが、すぐに姐さんの方を向きなおし た。 「…で、でもだって。一人でも大丈夫だって!」 「夕方までにワープポータルを取らねばならないのだろう?  気にするな。時間は待ってはくれぬぞ?」 「……う、むう…」 「じゃあこれ、預かっていた装備ね。  そしたら、行ってらっしゃいー」  ひらひらと手を振りながら、さっさと行けとばかりにルフェウスは笑顔を飛ばす。 『言いたい事、あるんだろう?』  笑顔に挟まれたWISにオレは弾かれたようにあいつを見た。ルフェウスは優しい顔をして 一つ、小さく頷いた。  お見通し、という事だろう。どうしても、あいつには適わない。  しかしまさか、姐さんに壁してもらうとは。  先ほどのヴァルキリーとの会話で姐さんに言わなきゃいけないと思っていたものの、正直会 い辛いなと思っていた矢先だったのに。 「では、基本どおりポリン島にでも向かおうか」  そう言うと姐さんは瞳を閉じる。足元からふわりと風が舞った。 「ウィンドウォーク」  スキルをぽつりと呟けば、風の膜が全身に纏まるのを感じることができた。 「さあ、行くぞ」 「了解」  オレは覚悟を決めて、頷いた。  ウィンドウォークは速度増加よりも移動速度は若干遅い。しかし、ノビの状態でポリン島ま で行くのには蝿でも使いまくろうかといった感じだったので、この状態はありがたい。  それに今のオレはポリンすらも強敵になるノービスレベル1。姐さんが壁してくれると言う のは非常に助かる。  たどり着いたポリン島で姐さんは素手でポポリンを殴りつけた。 「やはり、弓ではないとダメージは通らないな」  弓の攻撃はDEX依存。狩りステの姐さんのステはD>A>I。弓での攻撃は恐ろしいほど 脅威だが素手だと非常にかわいらしい数字が飛び出たりする。 「なんつうか、刃物持ってると言うのは非常に違和感があるなあ」  手に持った超強いマインゴーシュでポポリンを攻撃する。刃がポポリンに突き刺さる感触は 気分が悪くなるがそれは誰しもが感じたことだ。…慣れるのではなく、理解しなければ。  ハイノービスでもレベルは1。ポポリン1匹でジョブもベースも上がる。  転生ボーナスで初期値に100ポイント振り分けられるが、まずはどれに振るかは決まっている が、次々と索敵を開始する姐さんの後を追うのに必死でステータスはまだ碌に振れてない。 「ブレスや速度、IMにレックスエーテルナ。  つくづくプリーストのスキルは万能だと言いたい気分だ」  何匹目か数えるのを辞めたので、どれくらいポポリンマーリンを相手にしたかは知らないが、 姐さんはマーリンの攻撃を軽く避けながらも呟いた。 「スナの補助スキル、WWだけだったっけね」 「フラッシャーや、フリージングトラップも補助と言えば補助かもしれないが、普通こんなと ころでは使わぬだろう。  タゲが流れたら厄介だ」 「それは本気でやめて欲しいと思うよ」  軽い雑談も出来るほど余裕がある。何度かベースレベルが上がり、何度かジョブレベルが上 がり、もう間もなくでジョブも10になる。速いペースだ。 「後2、3匹位かな?」  経験値のパーセンテージを見て姐さんに伝え、それに姐さんは頷いたその矢先、すぐ傍でデ ビルリングが姿を現した。…そう言えば前にも出てきたよな。なんか恨みで買ってるのか、オ レ……?  すぐさま反応したのは姐さん。 「アンクルスネア!アローシャワー!!」  接敵直前に罠を置き、すぐさま弓を弦がえMOBの塊に弾き飛ばす。デビルリングに狙いを 定めたアンクルスネアは、周りの取り巻き共々捕縛する。 「トゥルーサイト、シャープシューティング!」  まるで光弾のように放たれる矢はデビルリングをその取り巻き巻き添えに貫いた。  マーリンは瞬間で崩れ去り残されたのは、デビルチとデビルリング本体。 「ダブルストレイファング!!」  間髪居れずにDSを放ち、デビルリングは湧いたその直後に地面に消えた。  ………やっぱりはええ……。  1分どころじゃない。多分10秒ちょっとしか経ってない。  オレ、あんなに苦労したのにな……。 「む?」  崩れたデビルリングの傍に落ちている物に気が付き、姐さんはその傍に歩み寄った。 「なんか出たのか?」 「ヘアバンドだ」 「マジで!?」  姐さんはそれをオレに向かって放り投げる。未鑑定ヘアバンド。デビルリングから落ちたも のだからそれは悪魔のヘアバンドに間違いない。 「受け取れ。後できちんとした転生祝いも渡すが、それは前祝として貰っておけ」 「いや、でも、これ姐さん出したものだし」 「気にするな。お前が居なければ、私はここに来る事も無かっただろうし、このルートをたど らなければこれにも出会わなかったのだろうしな」  あっさりと言ってのけ、姐さんはすたすたと先に進んでしまう。  うーむ、姐さんは女性なのだが、あまりにも男前過ぎる。  仕方なくそのヘアバンドは鞄の中にしまい、オレは姐さんの後を追った。  ふわりと光が現われ、どうやらジョブは10を迎えたようだった。 「では、私はここで待っているから、アコライトになって来い」  プロ方面の入り口に向かいながら姐さんはプロンテラがある方向を目で指した。 「いや、でも…」 「待っている、といっただろう?  適当に小ボスでも探しているさ」 「……う、うん…」  仕方なく、鞄から蝶の羽を取り出して…。 「あ、あのさ、姐さん」 「なんだ?」  今まで喉元まででかかった言葉は、なかなか外に出てくれない。  言わなければ。先ほどヴァルキリーに言われた事を姐さんにも伝えなければ。 「どうした?」 「……さっき、ヴァルキリーに会った時に言われたんだけど…」  何とかつっかえながらも言葉を紡ぐ。姐さんの顔は神妙なものになり、オレを見つめる。 「元の世界に戻る方法が見つかったんだ…」 「そうか」  話を聞き終えた姐さんはただ一言、そう呟いた。  その表情はいつものそれと変わらなく、だけどそれがかえって姐さんの心に暗いものを潜ま せているようで、オレは姐さんの顔を見ることが出来なかった。 「……どうした、リディック。  何故お前がそのような顔をする?」 「………だって…」 「私は、運が悪かっただけなのだ。  確かにレンとリアを失ったのは辛い。  だが、後悔はあの時に全て済ましてきた。  それに、逆に考えてみろ。  もし、その事を知っていて、私達の元にフィーナが現われたのなら…。  私達は全ての重みを彼女に背負わせていただろう。  彼女の意思を無視して、場合によっては悪意ある行動すらしてしまうかもしれない。  大丈夫だ。レンもリアも現実で死んだ等と誰が知っている?  この世界での記憶を失っている事だって考えられるだろう?  だから……。  だから……お前はもう泣くな」  姐さんはオレの肩に手を置き優しく微笑んだ。オレはその姐さんの顔を見ることも出来ずに ただ俯いていて。  辛いのはオレじゃなくて、姐さんの方なのに、なんでそういう風に笑えるんだよ……。 「リディック、今は昔を悔いる時ではない事をお前も知っているだろう?  さあ、早く転職して来い。  時間は、フィーナは待ってはくれないぞ?」 「…………うん…」  オレは乱暴に袖で目をこすって、蝶の羽を握り締めた。  一瞬の浮遊感、テレポを使ったときと同じ感覚で暗転した世界はすぐに色を取り戻す。  目の前には大聖堂が威風堂々と佇んでいた。 「…姐さん。なんで貴方はそんなに強いんですか?」  大聖堂の入り口に構える女神像。それを見ながらオレはポツリと呟いた。 「ただいま」  ポリン島にたどり着いて、PTメンバーのマップチェックを見ながら姐さんと合流を果たす。  転生アコライトは鮮やかな水色の服でなんとなくジャージっぽく見えるのはどうにかして欲 しいと思う。  プロンテラに戻った際、すぐに1次職に転職を済ませ、倉庫からアコライトが装備できる武 器や防具を引っ張り出して、振れるステータスを全部振り切っていた。  姐さんと合流したのは別れてから約1時間ちょっと。到着まで蝿の羽を多用したため、それ ほど時間は掛からなかったわけだ。 「戻ったか」  変わらないその表情で、姐さんはオレの姿を認めるとすぐに近寄ってくる。 「さあ、さっさとジョブを上げようか」  そう言って背中を叩き、オレを見て笑った。オレが頷いたのを確認して、姐さんは索敵を開 始した。  アコライトの武器は鈍器だ。刃物には無いMOBを叩いた感触も良いものではない。  ポリン種は硬くなったゼリーみたいなもので、倒すとぐしゃっとつぶれる。  なんとなく、えげつなく思えてくるのだが。 「……ん?」  何度か武器を振るってポポリンを倒したオレの方を見て、姐さんは眉をひそめた。 「何?」 「リディック、お前その攻撃速度…、AGI全振りか?」 「…す、スピポ使ってるから早く感じるんだよ」 「馬鹿者、私を謀ろうとするものがあるか。  …私は支援ハイプリーストになるものだとばかり思っていたが」  まいったな、とオレは頭をかいた。姐さんに嘘を突き通すなどできるわけはなく、オレは困 った顔のまま姐さんの方を向いた。 「…どんな型にしようか結構色々考えててさ。最初は完全支援にしようかとも思ってたんだけ ど…。でも、なんかそれって違うんだよな。  職はどうであれフィーナは前衛だし、後ろから支援を飛ばすことはできなくもないんだけど、 フィーナを盾にして、オレが安全な位置で支援ってどうかなってさ。  その時、倉庫の中で別キャラで使ってた鈍器が目に入って。  ……殴りならフィーナと並んで戦えるんじゃないかって。  ヒール以外はスキルINTに比例しないし、低くても充分支援って出来るんじゃないかと思 ってさ」  オレの言葉に姐さんは一瞬きょとんとした表情でオレを見て、ふと微笑む。 「……なるほど。  それほどまでに、お前はフィーナを好いているのだな」 「へ!?」  姐さんの言葉にオレは素っ頓狂な声を上げた。 「オレが、フィーナ…を……?」  あ、あれ?そうなのか?…いや、好きとか嫌いとか最初に言い出したのは……じゃなくて、 2択に迫られれば、す、す好きだって…。 「…………。  まさか、自覚していなかったのか?」  オレの混乱を他所に姐さんは呆れた声を上げる。 「ルフェウスから聞かされてはいたが、まさかこれほどまでだったとはな」  くっくっくと姐さんの忍び笑いに反論できる余裕も無く、オレはあたふたと自分の中の整理 をつけるため頭の中でちゃぶ台をひっくり返す。いや、余計散乱させてどうする。 「ふむ。良くトマトのように赤くなると言うのを聞いた事があったが、本当にそれだけ人間は 真っ赤になるものなのだな」 「ね、ねねね姐さんっ!!!」  あーー、やばい。オレ、フィーナの事マジで好きなんだわ。うわー、自覚した。  オレは動悸が治まるまで火照った頬をペシペシ叩いていた。