再誕 -Ragnarok Online- --- (5) --- そう、実はこのRORでは以前ROをプレイしていたプレイヤーには一つ特典があった。 それは『以前所持していたアイテムを一つだけRORの中に持ち込める』と言うものだ。 RORプレイヤーは参加の時点で以前ROで所持していた武器・防具・アイテム等から一つ、ROR内に持ち込みたい物を指定する。 もちろんBOSSカードや超レアと呼ばれるような一部のアイテムに関してはゲームバランスを崩しかねないと言う理由で制限が掛けられている為、持ち込めるのはイベントやBOSS戦以外の通常通常の狩で取得できる物と言う決まりはある。 だが長年使っていた愛着のあるアイテムを再び、しかも現実に使えると言うの前ROプレイヤーとしては凄く嬉しかった。 「俺はコレだなー」 そう言うとピロシキは懐から一本の短剣を取り出した。 細めの、背の部分から一本トゲが伸びたような短剣だ、刃の部分には不思議な斑模様が入っている。 「あ、カウンターダガーだ。」 「うん、ROの時はこれが欲しくて必死に金貯めたからなー」 ピロシキは逆手でダガーを持つと軽く空中を切る、なかなかその格好はさまになっていた。 「はふー、私はコレなのだ」 アユは自分の髪に着いていたクリップを指差した。 「フェンクリなのだ。」 「あ、ホントだカードが貼り付いてる。」 見るとクリップの裏側に跳ね回ってる魚の絵が描かれたカードが張り付いていた、フェンカードだ。 「ちなみに僕はコレだよ。」 そう言うとナギは自分がしていた厚手のマフラーを解く。 通常プリーストが大切にするマフラーと言えば一つだ。 「イミューンマフラーですね。」 「バッシュさん正解、しかもなんと+9」 言われてみれば普通のマフラーよりも随分と厚手だと思ったが、なるほどマントは精錬するとああなるのか。 「そう言うバッシュさんは?」 僕は腰に下げた大剣を抜く。 「僕はこれです。」 「それはツーハンドソードだね。」 「ええ、僕が一番最初に買った属性剣なんですよ。」 よく見れば剣の刃にはうっすらと紅い波紋が広がっている、火の属性を持っていると言う事だ。 「精錬は+4なんですけどね、この剣で色々な処を冒険して回ったんです。本当はもっと良いアイテムをって思ったんですけど・・・なぜか所持品のリストを見せられた時に目に留まっちゃって。」 「あー、分かるそれ。俺も結局カウンターダガーは+4止まりだしな。もっと良いアイテムあっても何か思い入れのあるヤツを選んじゃうんだよなー。」 「はふー、みんなロマンティックなのだ。Jさんは何もって来たのだ?」 「ボク?」 Jはまだアイテム整理の最中だった、いつの間にかゼロピーやらなにやらドロドロした物(多分ベト液)まで並べられている、ここでバザーでも開く気なんだろうか。 「ボクはコレだネ。」 妙に奇妙なイントネーション(彼曰く外国人風日本語らしい)で自分の仮面を指差した。 「ゴブ面ですか?」 「はふー、ゴブ面好きなJさんらしいだ」 「ちょっと待て、何かその面妙に分厚くないか?」 「んー言われてみればアイテム説明にあるような粗悪なって感じなないね、・・・ってまさか。」 「イエース♪」 その時、一瞬Jの仮面の奥の瞳が輝いた様な気がしたのは気のせいだろうか。 「+9ゴブ面♪」 『マジッスカ・・・』 皆同時に呟いた。 遠くでは馬の嘶きが聞こえる。