・・・ええと。さっきグレンさんと炭鉱へ金稼ぎしに行ったと思ったら 何時の間にか宿に一人残されていた、が、何が起こったか分からなかった訳ではない。 どうもリエッタさん、ローウィンさん二人はリアルに戻ったらしい。 昨晩知り合い酌を交わしたばかりだから少し寂しい気もするが、 無事に戻れたのだから良かったのかな。俺も戻る方法を考えとかなければ。 とりあえず、お世話になった宿に賃金を払って真っ直ぐにカプラの元へ。 先程大聖堂からの勅令で、フェイヨンの被災者の救済と 鎮魂祭に向けての手伝いに行くよう言われたんだっけな。 今は特に行く当てもないし、素直に従っておくか。 ・・・俺ってグレンさんが言った通り、普通に聖職者してるのかもね。 え?じゃあ炭鉱で吸ってたシガレットは何だったかって? さあ、スピポの影響というかその場のノリとしk ワープポータル !! 残念ながら途中でカプラの空間転移が作動してしまったようだ。 飛ばされた先はフェイヨンの南門付近だった。 なんだか騒がしいな。 「おい!そこのプリースト!」 門の方から走ってきたフェイヨン兵に呼び止められる。 余裕の無い表情だ。まさかまた魔物が? 「応援を頼む!カーリッツバーグが出た!」 なんと当たりらしい。しかも今度はカリツって。 誰かが落ちた古木の枝でも踏んづけたか知らないが迷惑な話だ。 兵と皆でフルボッコにしてグラストヘイムにお帰り願おう。 と、現場に駆けつけてみると・・・いたいた、 大勢の兵に囲まれたカーリッツバーグが・・・・・・なんかでかくないか? 「覚悟しろ!フェイヨンを脅かす魔物どもめ!」 「勘弁しろ!ボロボロな俺とペコを脅かす兵どもめ!」 最近のカリツは人語を喋るらしい。ついでにペコペコも連れてるようだ。 やれやれと溜め息をついて、兵の間に割り込んだ。 カリツがこちらを見るや指をさして叫ぶ。 「あ!お前、・・・えーと、ハイドリッヒ!」 「何!貴様この魔物の知り合いか!?」 「・・・いえ。俺に廃墟在住の知り合いはおりません」 荷物から聖水を取り出す。不死の相手と言えばコレだろう。 「ア・ス・ペ・ル・シ・オォォッ!!」 「ぎゃあああぁぁー!!」 カリツに向かって力いっぱいブン投げると顔面に命中。 瓶が割れ、中の水が飛び出すとカリツの黒い鎧を剥ぎ取っていった。 「な、こ、これは・・・!?」 アスペにより浄化された後に現れたのは濡れた金髪が光るクルセの姿だった。 周りの兵が驚きの声が上げどよめく。まさかそれはギャグでやっているのか? 「昨晩ぶりだな、クラウスさん?」 「ははは、名前出てこなかったのは謝るから止血してくれ」 クラウスさんはそう言いながら額に刺さった瓶の欠片を抜いていく。 顔や鎧の泥は落ちたが今度は血液だくだくだ。 二度もハゲ扱いされた仕返しのつもりだったが流石に見てて痛い。 クラウスさんのデコにヒールをかけてから、後ろでヘバるペコを丁寧に洗ってやった。 フェイヨンの兵は一時混乱していたようだが、簡単な説明をすると 信じたか信じてないか微妙な表情を浮かべて村へ戻っていった。 「・・・それで、エルミドはなんでフェイに?」 「クラウスさんと同じ、仕事だよ。臨時医療所の手伝いに来たんだ」 「なるほど。ってことはルーシエも来てるのか?」 「多分な。歩いて来るって言ってたから遅れるとは思うけど」 「歩いて来る・・・か。もしかして途中でラグナか例のストーカー達と出くわしてたりな」 最悪の場合俺が死ぬな、と付け加えるクラウスさん。何故? そんな風にだべりながらフェイヨンの門を潜った二人と一匹。 ルーシエさんが到着する前日の晩のことだ。