(>>20の続き) 「結局皆には無駄足をさせてしまったわね。お詫びも兼ねて今日は食べていきなさい。私の腕を披露してあげるわ。」 補給物資の到着も確認し、解散しようとした時にマリーさんがそんなことを言い出した。 丁寧にお礼を言っているルーシエさんに対し、クラウスさんとエルミドさんが変にはしゃいでいる。 さっきまで宿に帰る気満々だっただろうに、既に遥か彼方へ追いやられてしまったようだ。 そういえばさっきクラウスさんの目に涙が見えた気がしたけど、ルーシエさんの一撃がそこまで効いたのかな? じゃあ俺は一人寂しく病室に… 「ルクス君も、もう八割方大丈夫だろうから食べていきなさい」 「ご馳走になります」 病室に帰る前に寄る所が出来たようだ。 臨時医療所のスタッフの大半はフェイヨン在住ではない為、医療所内に割り当てられた部屋で寝泊りをしている。 基本的に相部屋であり、所長であるマリーさんもフリージアと同じ部屋で寝泊りしているらしい。 マリーさんは「少し時間かかるかも」と言って、厨房へ入っていった。 料理が出来るまでの間に、ルーシエさんとエルミドさん、それとフリージアは夜の祈りを捧げに行った。 クラウスさんは「風呂に入ってくる」と言って出て行った。 俺は部屋に残り、クリムゾンボルトの手入れをしながら今日の事を考えていた。 初めての戦闘のこと。  ―自分の意思で銃を撃ったんだよな。それで狼を殺めたことは事実だ。   あのさすらい狼達にも戦う理由があったのかもしれない。けれど其れで俺が死んでやる理由にはならない。   別に命を軽視している訳ではない。重く考えるからこそ、奪った命の分だけ生きなければならないな。   守りたい仲間がいるなら、尚更だ。   ルーシエさんは戦闘に馴れていたな。狼達の奇襲にも動じることもなく前衛張れてたしな。   クラウスさんやエルミドさんも流石だったな。エルダーウィロー程度なんて目じゃないか。   フリージアはあの戦闘以降は怯える事もなかったな。後は経験を積んで行けば大丈夫だろう。 ルーシエさん達のこと。  ―俺と同じ様に別世界から来た異邦人なんだよな。   ルーシエさん達は元の世界に帰る為の手段を探してるのかな?   他にも別世界からこの世界に来た人がいるのかな?   俺は元の世界に帰りたいのか?それともこの世界に残りたいのか?   何よりなんで俺はこの世界に来たんだ?考えれば考えるほど謎が増えていくなあ…。 ぼんやりと考えていると皆が戻って来たようだ。クラウスさんの頭から湯気が出ている。 暫く雑談していると、料理が出来上がったらしい。 そして俺はこの後、地獄を見ることになる。 「さあ、できたわよ。マリーさん特製激辛料理!」 其れは料理と言うには余りにも赤く、紅い料理だった。  ―これは俺の威信に関わる為に行っておくが、俺は辛い料理は嫌いではない。むしろ好きと言ってもいい。   しかしこの体―ルクスは辛いものが苦手らしい。(それを知ったのは食べた後だったが。)   そしてそれ以上に、マリーさんの激辛料理の破壊力はバツグンだった。 「さあ、召し上がれ☆」 ルクスが激辛料理を食べて火を吹くまで、あと30秒