「…とうとう脱退したか…」  月明かりに照らされた室内はがらんとしており、そこに居たはずの部屋主の存在を否定するもの ばかりがちりばめられている。  唯一残されたものは机の上に置かれた1枚の用紙とギルドエンブレム。  脱退する時に記入するその用紙には、ただその名だけが刻まれており、脱退する理由は空白のま まだった。  その用紙を手に取り、冷たい眼差しで用紙の名を見る。 『アクト=ティンク』  乱れ歪んだその文字は書いた本人かそうではないかすらわからない。  いや、書いたのは恐らく本人だろう。歪んだ文字からしてその精神状況たるはかなり異常をきた している可能性もある。  警備の甘い宿舎に見えようとも、他者の侵入に全く気が付かない事はない。  ここには常時ギルドメンバーの誰かしらが残っているのだ。特に留守を預かるのはシーフ系の者 が多く、次点に弓職の者が付く。浸入その他についてもっとも理解している者がこの宿舎を警邏し ているのだ。 「……お姉ちゃん」  すぐ後ろに佇むローグの姿にこのギルドのマスター、ケルビムが振り返った。そこの居るのは気 が付いていた。 「あくとん連れてったギルド、わかったよ」 「そうか」  ローグの少女ナツキは悲しそうな表情で姉と慕うケルビムを見る。 「『レッドエンジェル』。マスターはたぶん、アムリタっていうアルケミスト」 「…そうか」 「これからマスターのとこに行って来るね」 「ああ」  ナツキはゆっくりと踵を返し部屋から出ようとする。その後姿を黙ってみていたケルビムは「ナ ツキ」と彼女を呼んだ。  こつこつと床を踏み、振り返るナツキの傍まで歩み身をかがめ、彼女を優しく抱き留める。 「…すまない。お前にばかり苦労を掛けさせて」 「平気だよ。お姉ちゃんの力になれるんだったら、なっちゃんなんでもできるもん」 「……馬鹿者。こんな時に強がる奴がいるか。  お前は見たのだろう?狂気に侵されたアクトの姿を。  私は恐ろしい。人が狂っていく姿を見るのは……。  ……私の力が足りない故に、本当にすまないことをしている…」 「…………お姉ちゃん…」  ナツキからケルビムの顔を見る事は出来ない。だが、彼女がどれだけ心を痛めているかわかる。  そうやって自分を心配してくれることが嬉しくて、ナツキはケルビムの背に手を回してしがみつ く。  ケルビムが自分を上辺だけで見ていない事を知っている。ナツキをどういう心境で送り出してい るかも知っている。 「……もしも、わずかでも危険を感じたらすぐに逃げろ。  私はもうこれ以上誰も失いたくない……」 「……うん。  うん、わかってるよお姉ちゃん……」  月明かりがまるで本当の姉妹のような二人を静かに照らしていた。  朝食の時それなりに雑談も交差する中、それは取り留めの無い会話から始まった。 「そう言えば、皆さんって何処に住んでいるのですか?」  普段現実の世界の事については殆ど触れる事は無いのだが、他愛の無い日常会話の中に地域を促 す名称や習慣が含まれることもあり、それもあってかついついとフィーナはその台詞を放った。  フィーナを除きこの3人は付き合いは長いとは言え、現実の事についてはどうも興味が無いのだ ろうか、お互いの住んでいるところを言った事は無く、その言葉に彼女の方を見た。 「僕は××県だよ」  さらりと何事も無いように県名を口に出せば、その言葉におや、と首を捻るリディック。 「何?ルフェウスって××県?  もしかして、近所?」 「リディックも?」 「……俺も出身は違うが住んでるところは同じ県だな」 「3人とも同じところなんですか」  初めて住んでいる県を言えば揃いもそろって同じ場所。偶然とは恐ろしいものだと苦笑する。 「もしかして、現実ですれ違ってたりしてねえ」 「マンションの隣の住人だったら超怖いな」 「で、フィーナは?」 「私、○○県なんです」  遠くも無いが近くも無い。そんな中途半端な距離。 「でも3人とも近いところだったら、戻ったら会って見たいとかあるんじゃないですか?」 「あーそれならオレ、ルフェウスの中の人が気になるっちゃ、気になるな」  4人の中で唯一の性別逆転の人ルフェウスはその言葉に小さく唸る。 「『中の人などいない』…と言いたいところだけど、戻れたらそれはそれで面白いかも知れないね え。いっそのことオフ会やってみよか?」 「この状況でオフ会も何もあったもんじゃねえとは思うけどな」  もっともなツッコミを入れるラルに、別に良いじゃないかとルフェウスは笑った。 「でもフィーナ、ちょっと遠いよな。  オレ免許持ってないし、電車じゃ厳しいか?」  そんな言葉をフィーナに掛けてみれば、彼女はうーん、と遠くを見た。 「―――に車出してもらえるかも…」  その瞬間、空気が凍った。  フィーナが発したその名前は明らかに日本男子名、しかも呼び捨て。彼女の性格からして、兄や 父親を呼び捨てるという事は恐らく無い。  以前、さりげない会話の中からフィーナのリアル年齢を聞いたことがあったが、弟だとしたら車 の免許を所得できる年齢にはありえない。  その凍った空気の中、ルフェウスは視線を彷徨わせながらも、おそるおそる口を開く。 「誰?」  いきなりの固有名詞であるからして、そう尋ねるのは基本かもしれない。  問われ、一瞬何のことかわからないようなその表情のフィーナは、何かに気がつき「あっ」と口 元に手を当て気まずそうに視線を横にずらした。 「あ、あの…、えっと……、  彼氏…なんです。その、高校受験の時に家庭教師に来てくれて、それからの付き合いで…」  つまりは3年以上の付き合いとなる。しどろもどろと綴る言葉はこの場で言うことじゃないと言 う表われか。 「あ、その、ごめんなさい、私ったら」  自分の言葉が気まずさを醸し出しているような気になったフィーナは慌ててご馳走様でした、と 立ち上がり自分の食器をキッチンの方へ持っていく。そしてすぐに戻ってくるといそいそと家を出 る準備を開始した。別に隠していたいわけじゃないものの、場の空気を壊すのは本意ではなく、う っかり言ってしまった失言にどう取り繕うか判断の付かない状況らしい。要するに現在の行動は逃 避の方向に向かっていると見て間違いない。 「あの、で、では、行って来ます。  ……あ、そうだ。  リディックさん、まだまだ追いつかれませんからね?」  それだけ言うとすぐさま扉の外へ出て行った。 「……いってらっしゃーい」  そんなフィーナを見送りながら気まずい表情で明後日の方を向くルフェウス。ラルは肩を震わせ 何かを耐えてるようで――つまりは笑い出すのを堪えていただけなのだが――す、と立ち上がって 窓際に活けている花瓶から一輪の花を引き抜いた。  それを今だ硬直しているリディックの前にそっと置くと一言。 「なむ」 「うわ、それきつっ!!」  その行動に思わず吹きだしながらも、とりあえずルフェウスも手を合掌させて「なむー」と言う。 「………………、  じゃああしゃああぁぁあっ!!!」(注:『やかましい』)  リディックは叫んで置かれた花を投げつけた。 「……そりゃそう言うオチってのも存在するわな」  散々からかわれ、こちらとしては落ち込みたくもなるこの心境。部屋に引きこもってめそめそす るのはあまりにも女々し過ぎるとその案を破り捨て。  ふと考える。ここで憂さ晴らしは男らしくない。切り替え…そう切り替えが肝心だ。  そうだ、告白してごめんなさい言われるよりもマシじゃね?そう思えば幾分心も晴れるさ!  涙ぐましくもそう勤めるリディックは自分が狩りに出るため、自分の部屋で装備の確認をしてい た。 「…あ」  サイドテーブルの引き出しを開けるとそこには、小さな光を放つ一つの指輪。以前青ジェムの変 わりにと受け取ったダイヤの指輪があった。  差し込む光で輝きの変わるその指輪は技巧の凝らした一品で、実用性には全くならなくとも観賞 用として充分な価値がある。……プレゼント?誰にやるよ? 「そういや、そのまま放置してたなあ」  手にとって眺めてみればそこで初めて気が付く内側に彫られた文字。 『To Amrita』  そう刻まれた名前は、グチグチと泣き言言われたあのプリーストが漏らした女性の名前。 「…こう言うのって名前刻まれるのか…?」  ただNPCから購入するその指輪に名前が刻まれるというのは妙でもある。あのプリーストはプ レイヤーで間違いないはずで、そういう凝ったことを出来るとは思えない。 「……変なの」  自身がプレイヤーだった時期からマリッジシステムには触れていなかった為、そういう仕様はリ ディックには理解できなかった。 「持っててもしゃあないし、ルフェウスに売ってもらおかな」  ピンと弾き、弧を描きながら宙を舞う指輪をぱし、と掴みリディックは部屋を出て行った。 「今日は引き篭もってるかと思った」  降りてきて第一声がそれのルフェウスにうるせえと一言投げかけ、リディックは先程の指輪をル フェウスに放る。 「何これ?」  取り落とすことなくその指輪を受け取ったルフェウスはそれをまじまじ見ながら、哀れみの満ち たその視線をリディックに移す。  その意味に気が付いてか渋い顔を浮かべながら、とりあえず拳を握るのをやめておこうと心に誓 うリディック。 「違うよ。ちょっと前にジェム代って渡されたんだよ。  ……でさ、持ってても仕方ないし、それ売ってくれね?」 「別に構わないけど……?」 「それさ、内側に名前が刻まれてんだけどそれでも平気なのか?」 「名前?クリスマスリングでもないのに?」  ルフェウスが受け取ったのはダイヤの指輪。結婚式をやる上で必要になるだけのただのアイテム に名前が刻めるというのはルフェウスも知らなかった。 「…僕、貴金属専門店に勤務したこと無いから知らないけどさ…大丈夫なんじゃない?」  所詮はアイテム。普通にOC売りも可能なはずだ。そう思いながらルフェウスはその内側に刻ま れた名前を見る。少々悪趣味な気もするが、好奇心というのがかなり大きい。 「…えーと…」  小さく刻まれた名前を目を細めて眺めて……、それは次第に信じられないものを見るかのように 大きく目を見開いた。指輪を持つ手が小刻みに震える。 「…?  ルフェウス?」  普段全く見る事の無いルフェウスの様子に怪訝な表情で名を呼べば、ルフェウスはき、とリディ ックの方を見た。見る、というより睨んでいるに近い。 「会ったの!?」 「え?」 「この、アムリタって人に会ったの!!?」  鬼気迫るその問いかけにリディックは驚きながらも首を横に振った。 「会ってないんだね!?」 「あ、ああ…」 「……そうか…」  息を大きく吐き、安堵の表情になるルフェウスにリディックは眉を寄せる。 「誰なんだ…っていうか知ってる人なのか?」 「あ…」  そういう風に尋ねればこういう風に返ってくるのは道理。ちょっと迂闊だったな、とルフェウス は心の中で舌打ちする。  昨日の夜、ナツキがルフェウスの元に訪れアムリタの名を言った。  いや、その以前よりもルフェウスはアムリタの事を知っていた。出来るならあって欲しくないそ の事実と、リディックが持っていた指輪の名前が同一であったが為、いつもの鉄仮面は剥がれ落ち てしまった。 「…なんだよ?」 「あー。うん」  さてどう言えば良いのやら。 「なんて言うかね、一言で言うと『姫』…かなあ?」 「それだけでお前が取り乱すとは思えないけど……。  もしかして、あれか。踏み込んで欲しくない領域ってやつ」  リディックのその言葉にルフェウスはきょとんとした表情で彼を見た。気遣いだとか心理戦とか そう言うのに全く持って鈍感、かつ事件に首を突っ込みたがる……いや、事件の方からやってくる 不幸体質の彼にしては珍しい逃げの言葉。 「……うん、そう…かな…」  隠し事がまた一つ。なんでもないわけじゃないのだ。明かせない事実を積み重ねて平気なわけじ ゃないのだ。何があってもリディックにはこの件に触れて欲しくないのだ。以前リディックにこう いう姿を見せたくないと言ったのは心情的なものが大きかったのだが、それよりも絶対に関わって 欲しくない理由があった。それは『リディックがプリーストだから』。  もしもアサシンとかナイトなら、もしかしたら手伝ってもらったかもしれない。  しかし自分が確認しているだけでリアルに来たプリーストの数は少ない。目の前に居るリディッ クとRSに所属している一人、後はフリーで二人居るかどうか。その中にハイプリーストなどリデ ィックしかいない。  例え殴りでもそのポテンシャルの高さは異常なのだ。  シロポ連打とか餅連打とかだったらプリいらなくね?と良く聞くが、それはあくまでもプレイヤ ーならということだ。どうやってリアルで武器を振るいながら、攻撃を防ぎながら回復剤を使用で きる?  どんな怪我も一瞬で回復させ、普段よりも一回り以上の実力を出すことが出来る支援。  記録した場所に瞬時に他者を移動させることの出来るワープポータル。  そして何よりもリザレクションの存在。  味方を復帰させるのではない。敵の…リアルの拷問させる為のスキル。イグドラシルの葉でも代 用は効くが、費用は高く状況を間違えれば無駄になる。 「とぅ」  すこん。 「ん!?」 「すげえ小難しい顔して。めっずらしいの。  わかってるって。手は出さないし、首もつっこまね。  おーけー、触れるなって言うなら遠巻き4マップくらいにしとくさ」  へらり、と気の抜ける笑みを浮かべるリディックにルフェウスは数度瞬きを繰り返した。  理解してくれるのが嬉しかった。隠さなきゃいけないのが悔しかった。  全部終わったら、その時全部話そう。いつ終わるか判らないけどいつかきっと何も隠さず全部打 ち明けよう。それまでは、どうかそれまでは何事も無く皆が平穏な生活を送れます様に。 「…それはそうと…  よくも僕を叩いたね……?」 「……OKルフェウス、時に落ち着け。  まずはその手に持っているマリンスフィアを置いてから話そうじゃないか」 ----------------------------------------------------------------------------------------- 117:突然ですが臨時ニュースです。 22話はもうちょっと続いてますが、この下の話は非常にダーク路線貫いております。グロ表現 は少ないはずですが。 かまわねえ!と思われる男気溢れるお方は気にせずスクロールしてやってください。 いやん、そんなのむりむりと思われるお方は規制終了時点ですぐさまリターンなさってくださ い。 うん、たった60行程度の文章に通常、規制と二通り作るのはあぷろだに負担をかけそうな気が したので、今回の手法をとらせていただきました。 何卒理解の程よろしくお願いします。 ----------------------------------------------------------------------------------------- <<規制Ver>> 「ちちwwしりwwふとももwwwwwwwーーーーーー!!!!」 「ぎゃあああーーーーっ!!!!」  室内で叫び声が聞こえた。奇怪な絶叫と逃げ惑う悲鳴。それをのぞき窓で眺めながら女は笑って いた。 「ちょwwwバカ過ぎwwww直結乙wwww」 「…悪趣味だな、お前も……」  笑う女の後ろでこめかみに一滴の汗を伝わせ、呆れきった冷たい声で女に言う。 「だってさーーー、直結って女MOBにでも欲情しちゃってるんだよ^^;」  説明しよう。追うのは逆毛騎士(※全国の紳士逆毛の皆様本当に申し訳ございません)、逃げ惑 うのはムナたん、イシス姐さん、ソヒーたん、アリスたん、ジルタス様、サキュバス様というRO 屈指の萌えMOB達。彼女らは不幸にも枝で召喚された哀れなMOB達なのだ。  因みに他に召喚されたMOBは召喚の度にご臨終されている。  そう言ったある意味パラダイスのこの室内で逆毛騎士は芝生を生やしながら、ちちしりふともも と叫び続けていた。  そりゃあ追われる彼女らだって抵抗はする。  しかし、AGI−LUKの村正特化騎士はそんなか弱い攻撃を華麗に避け、セクハラに走るもの だからもう今となっては逃げるしか手段は無いのだ。 「だけど同じ事をずっと繰り返すのも、飽きるといえば飽きるわよね…」  そう言って女は再び鞄の中から数本の古木の枝を取り出した。それを見た後ろの声は、げ、と呻 いた。 「まだ増やすのか?哀れなMOBを?」 「いやあ、まさかサキュバスでも逃げちゃう現状だと、もうちょっとアクセント欲しくならない?  ということで召喚召喚、っと」  のぞき窓に手を突っ込んで室内の中で枝を折る。  ぽっきんと乾いた音が今も阿鼻叫喚となっている室内に慎ましやかに響いた。  しゅうしゅうと音をたてその枝の魔力に呼ばれたMOB。  なんと長い金髪、スレンダーな肢体、容姿秀麗な半透明のあのお方がこの室内に召喚されてしま った!!! 「DOPキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!」 「うはwwwせしるたんwwwwktkrwwww」  召喚され何が起こったのか理解できていないのか、スナイパDOPセシル=ディモンは室内を見渡 す。  …なぜ、冒険者を襲うべきMOBが冒険者に追われている…?  数度瞬きを繰り返し、状況を判断しようと弓を手に意識を集中し…、 「せっしるたーーーーーん!!」 「!!!??」  秘儀ルパン☆ダイブ!!  流石にそれは常識の範疇外だ! 「なんなのよっ!!!アンタはっ!!!?」  咄嗟に放つチャージアロー。流石スナイパー、AGI−LUKなんか目じゃないね!  びすっと刺さった矢の勢いに後ろに吹っ飛ぶ逆毛騎士。 「流石wwwせしるたんwww」  すぽんと矢を引っこ抜き、逆毛騎士はにじる寄る! 「なんなのよ!?近寄るんじゃないわよ!?」  ぴすぴすと矢を受けながら逆毛騎士は時折避けたり刺さったりしながら、セシルとの差を詰めよ うと必死だが近寄れば再びチャージアローをくらって振り出しに戻る。  ところでこの騎士、何故これだけダメージを受けて死なないかといえば室内の扉付近に咲いたジ オグラファーの所為だったりする。  ぽろんぽろんと定期的にヒールを繰り返すジオグラファーは、もし意識や思考が存在していたの ならばきっと傍観するに違いないであろうが、しかし惜しいかな、アルケミストに召喚されたジオ は主人に逆らうことなどできはしないのだ。  この中で唯一逆毛騎士に攻撃を成功させているセシルにやんや喝采を送る他女MOB衆。  その喝采が聞こえたのかセシルはぽっと顔を紅潮させながら、 「べ、べつにあんた達のためにやってるんじゃないわよ!?  自分の身を守るためにやってるのよ!」 「ツンデレwwwwktkrwwww」  それだけでご飯3杯いけます調の逆毛騎士。しかし、この逆毛がとうとう禁断の台詞を言い放っ たのだ!!!!!   _  ∩ 「ひんぬーひんぬー( ゚∀゚)彡」 「誰が大草原の小さな胸じゃああああああっ!!!!」  バックに雷を纏いし金色の乙女、引き絞る弓は砲台の如く、哀れ汝を愚弄すべし輩を前に、ひた すら討つ討つ討つ討つ討つ!!  流石にぶちぎれたスナDOPの前にジオグラファーだけでは対処も出来ず、逆毛の騎士はハリネ ズミと化した。 「口は災いの元とはよく言ったものね」  そんな光景をのぞき窓から眺めながら女は静かに呟いた。 「ヒール間に合えば、もうちょっと楽しかった…かな?」  白ポピッチャーはもったいないのでやる気は無い。 「そうなると、やっぱりプリって必須よね」  どういう流れでそういう話になるのかわからない後ろの声の人はうーん、と小さく唸った。 「……そういえば…前、どっかでハイプリ見たような……」 「おお!!!ぜひスカウトしてきて頂戴!  報酬は…そうね!  男MOBでも女MOBでもたーーーんと用意しておくわ!!」 「……………………………………………………MOBかよ……………………」 ------------------規制Ver糸冬---------------------------------------------------------            117:_l ̄l○<すいません、ネタが、ネタがうまく思いつかなかった… <<通常Ver>>  けたたましい叫び声が闇の奥から聞こえた。  悲鳴なのか、笑っているのかそれすらもわからない狂気の声。  何かを壊す音、引き裂かれる音、まるでそれは破壊の音。  それを間近で見ながら女は笑っていた。面白い玩具を与えられた子供のような無邪気な笑いを浮 かべていた。 「もう壊すのか」 「うん、そう。  役に立たない玩具は壊すのが一番だよねっ」  女の後ろから聞こえた声は感情が無く冷たい声色。 「…あ、死んだ」  喧しいまでの声は止み、残ったのは堀に敷き詰められた魔物達。枝で召喚された凶悪な魔物達は、 他の獲物が無いかと辺りをうろつき出す。 「もう、もうちょっと耐えなさいよねー。  騎士なのにだっさいの」  そう言いながら女は鞄から小瓶を取り出し、それを地面に落とした。 「ジオグラファー、召喚っ!」  彼女の言葉に反応して、小瓶に入っていた種子は腰丈ほどの花を咲かす。  ジオグラファーが召喚されたのを確認し、女は再び鞄から一枚の葉を取り出して、魔物達が跋扈 する堀に放った。 「リザレクションっ」  女の声に反応してか、イグドラシルの葉は光り堀の中に居た唯一の魔物以外の者、今では肉の塊 のような人間を再生させる。再生にはそれほど時間は掛からない。復活された人間はすぐに意識を 記憶を取り戻す。そして魔物は生きている人間を殺すべく殺到して。  イグドラシルの葉では体力は殆ど回復する事は無く、多分復活した人間は最初の一撃で再び肉の 塊になるはずだったのだが、女は簡単にそれを許さなかった。  透き通る白い液体の入った瓶をその人間に投げつけ、ジオグラファーは傷ついた人間を回復すべ くヒールを唱える。  そして再び聞こえる狂った悲鳴。 「倒せば楽になるのに。逃げてばっかりじゃまた死んじゃうよ〜〜〜」 「……武器を取り上げられた村正騎士が勝てるとは思えないがな」 「あっはは〜〜、それはそうだね」  冷淡な言葉に対して女は屈託の無い笑みを浮かべる。 「だけど、めんどくさいなあ。  イグ葉に白ポにプラントボトル。お金だって沢山掛かっちゃうのが痛いよねえ。  ほんと、プリ欲しくなっちゃうよ。  あ〜あ、こんなことなら前に見つけたリアルノビ拉致ってプリにしちゃえば良かった」 「前に言っていた、理解に苦しむ慈善事業の所為だろう?」 「ゆっくり狂っていく様を見ていたかったのよね〜。  こちらに紛れ込んだ本当のノービス。1kすら大金だと言うような子が、この世界でどう変わっ ていくのか見たかったのよ。  ゲームと違って衣食住が大きいウェイトを占めてるこの世界で、飢えて狂っていくの。  でも、飢餓でも寒暖でも死なないし、魔物に殺されてもすぐに生き返るから、苦しみがどんどん 募ってって。  そうなったらどんな風になるのか気になるのよね〜」  女はそう言うと、ふぅとため息をついた。 「しばらくフェイヨンで探してみたけど、居なくなって。  他の町でも探してみたけど居なかったのよね。あー、プロンテラは探す意味は無いわね。貧民街 の設定されてない首都は浮浪者にはトコトン厳しいの。  リアルノビならすぐに逃げ出すよ」 「……フェイヨン…、よくあいつらに見つからなかったな」 「あのノビがあの女に保護されてるんだったら、このバカ使ってこっちに連れてくることもできた んだろうけどね。一体全体何処に消えたのやら……。ってもう!また死んでるーー!!」  めんどくさい、めんどくさいと女は再び先程の手順を繰り返す。 「プリが居ればお金も掛からずにもうちょっと楽しめるって言うのにさっ」 「………この間、ハイプリーストを見たぞ?」 「ゲームのハイプリなんてごろごろ……、  って、あ、もしかして?」 「ああ」 「やりいっ!ねえすぐに連れてきて!もうどんな手段も使っても構わないからっ!  ………殺しちゃっても構わないから、ね?」