「っし、ここのポスター張りもしっかり貼り付けたし、次は精錬所か」 マリーさんに手渡されたメモと地図を元に、指定の場所にポスターや看板を設置していく。 無論他の露店や設置案内、その他色々なポスターとかも貼られている為、以外に張る場所に苦労する。 「ええとなになに、  『商人ギルド鎮魂祭本部 〜迷子預かり所、及び迷子のアナウンスは…〜』  『王国騎士団主催ペコ体験騎乗 〜小さなお子様は保護者同伴でご参加を…〜』  『イツゴロウの動物王国 〜特設キューペットのふれあいコーナー〜』  『世紀のアイドルがフェイヨンに降臨!アニバーサリーちゃんライブステージ! 〜開始時刻は…〜』  …色々あるなあ。」  ―アニバーサリーちゃんて、まさかあのアニバーサリーちゃんか?いや、まさか、な…。 そんな事を考えながら精錬所への道を歩いてく。 歩きながら街を見渡せば明日に向けての準備が着々と進んでいる事がよく判る。 特に露店構築準備を進めている商人達が自然と眼に入る。 見るからに長年やってますという感じの商人達やBS・アルケミ達は、テキパキと作業していて見てて気持ちが良い。 中には祭は明日だというのに露店を始めている人もいたりする。 それに対し、なり立てらしい商人達は見るからに危なっかしい。 特にあそこの♀マーチャントなんかは、はわはわ言いながら作業しているもんだから心配になってしまう。 あ、♂マーチャントに怒られた。 っと、精錬所はここか―っと? 「頼むアントニオ、明日一日だけ仕事場貸してくれ!!」 「断る!ウチも明日は稼ぎ時だからな。いくら同門の友とはいえ王都の破壊神に作業場を壊されては適わん!!」 「そこを何とか!ならせめて店の一角だけでも貸してくれ!」 「しつこいぞ!大体お前は昔から―」 どうやら精錬所の主であるアントニオさんはお取り込み中のようだ。 その様子を苦笑いしながら見ていた修理工(名前あったっけ?)に許可を頂き、ポスターを貼らせて貰う。 あの2人は同じ師に使えた友だから心配しなくても良いとのことだ。 結局貸すのかどうかが気になるが、俺は次の場所へと急ぐ事にした。 「次は『三丁目の八百屋横の木に看板を〜』って三丁目って何処だよw」 突っ込む相手がいないため、セルフツッコミを入れつつ地図で確認する。 「クラウスっ!またお前か〜〜!!」 その途中に聞きなれた声が耳に入る。 クラウスさん…またなんかやったんですか。 好奇心に負けそうになるも、今は仕事中と気持ちを切り替え看板を設置する。 他にも街の各所へポスター&看板を設置し、最後はフェイヨン入り口付近のカプラグラリス付近への看板設置だった。 「いらっしゃいませ、カプラサービスへようこそ。これはルクス様、退院おめでとうございます。」 カプラサービスには独自の情報網があると聞いているが、まさか俺が退院した情報まで入手しているとは思わなかった。 おっと、驚いてばかりはいられない。仕事を済ませないと…。 「フェイヨン臨時医療所所長ローズマリー様からのご依頼の件ですね。  お話は既に承っておりますので、対象の品を預かりましたら、明日こちらの職員の手によって設置させて頂きます。」 手並みの良さは流石としかいえないな。 「あ、ついでに倉庫内のリストを確認させて貰っても良いですか?」 「はい、それでは此方をどうぞ」 手数料を支払い、一枚のリストを受け取る。 思った以上に銃器のストックがある事に驚く。 「対中ガリスンとキングバードデストロイヤー、それとファイアスフィアケースを1ケース引き出せるかな?」 「はい、それでは此方になります。」 手渡されるガンケース2箱とスフィアケース1箱。中身を確認すると確かに俺のものだ。 いや、それよりも― 「今何処から出しました?」 「申し訳御座いません、企業秘密の為お答えする事が出来ません。」 ものすご〜くきになるんですけど。 結局あの後しつこく聞き出そうとするが徒労に終わった為、近くの露店でバナナジュースを買い、帰宅する事にした。 そして医療所へ帰ってきた俺が見たのは、医療所の厩舎でクラウスさんのペコに頬擦りしているフリージアの姿だった…。