「皆の尽力もあり、患者達は概ね回復に向かっているわ。よって当初の予定通り、今日は最低限のスタッフだけを残し、他のスタッフは非番にするわ。  鎮魂祭に参加して羽を伸ばすなり、部屋で寝てるなり好きになさい。  万が一、人手が足りないと判断した時に限り、必要な人員を直接Wisで呼ぶわ。その時は10分以内に駆けつけてね♪」 毎日朝食前に行われている食堂でのミーティングで、マリーさんが皆に告知した事だった。 10分で戻れなんて無茶を言う。とも思ったが、此処が宿屋の施設だという事を俺は思い出した。 位置セーブさえすれば蝶の羽なりテレポートなりワープポータルなりですぐに戻れるって事か。いやはや便利な世の中になったもんだ。 「それでは解散。」 ミーティングが終わり、それぞれ思い思いに散っていく。 とはいえミーティング後は朝食を取るために、大半はそのまま席に座っている。無論、俺達もだ。 これは余談だが動ける患者さんは食堂で朝食を食べる事ができる。席数の関係でスタッフが先に朝食を食べてからじゃないと中々座れないのが難点だが…。 耳を傾けると今日の非番で何処に行くかが主な話題のようだ。 「今日はいろいろな所に行きましょうね」 「おいおいフリージア、祭の開始は9:00からですよ?」 「だって楽しみじゃないですか〜」 朝食を食べながらフリージアが話しかけてくる。既に気持ちはお祭気分みたいだ。 「お邪魔なら席変えようか?」 「お邪魔ではないから席を替える必要もありません。」 「だって…ねえ?」 「だよねえ、おねえちゃん?」 席の向かいに座っているルーシエさんが変に気を利かせてくる。そしてそれに同意する如月さん。何ですか2人共そのニヤニヤは? 二人の隣に座っているエルミドさんは、朝だというのに何か疲れているようにも見える。 「エルミドさん、何かあったんですか?」 「ああルクスさん、実は昨夜マリーさんから割り当てられた部屋がルーシエさん達と一緒の部屋でね…。」 「部屋が空いてない?それなら部屋なら俺のへy」「おおっと、手がすべったぁ!!!」 突如現れたマリーさんが、俺の口にレッドチリを込んでくる! 「〜〜〜!!!!」←悶絶中 「ごめんなさいね、ルクス君。手が滑っちゃった☆」 フリージアから水を貰い、何とか治まったようだ。 「ふぅ、死ぬかと思った。」 「ごめんなさいね、ルクス君。手が滑っちゃったのよ。それと隣空いてるから失礼してるわよ。」 手が滑ったぐらいで何でレッドチリが俺の口に入るんですか?言ったらまたレッドチリを押し込まれそうだから言わないけれど。 「ちょっとルクス君に言っておきたい事があってね。」 「何ですか?用事ですか?」 「それは無いわね。流石にデート当日に用事を頼むほど野暮じゃあないわ。」 「なっ、ちょ、何を言い出しますですか?」 顔が赤くなっていくのが判る。こらそこ、ルーシエさん達、何三人でヒソヒソ話をしてますか? 「わ、わたし達は別にそういうわけじゃあ」 「はいはい、若いって良いわねぇ」 赤くなったフリージアも反論しようとするが、全く効果が無いようだ。 「それでね、ルクス君に今日はシアをよろしくって言おうと思ってね」 「…シア?」 聞いた事の無い人名に戸惑う俺。ルーシエさん達の方を見るが首を横に振るばかりだ。 「もしかして聞いてないかしら?シアっていうのはフリージアの愛称の事よ。」 「わたしはあんまりシアって呼ばれるの好きじゃないから教えてないのに…。」 「そうなんだ。俺は悪くないと思うけど?」 「えっ、そうかな?」 「うん。でもフリージアの方が良いって言うならそう呼ぶよ。」 「どっちでも良いかな。好きな方で読んで。」 取りあえずフリージアのご機嫌回復。 しかし『マリー』に『シア』かぁ、それなんてザールブr(ry そんな事を思っていると、クラウスさんが食堂に顔を出してくる。 「おはよう〜。エルミド、隣空いてるなら座るぞ。」 「クラウス、何で『イ』じゃ無いんだ!」 「いきなり何だ!つか『イ』って何だ?」 いきなりルーシエさんに怒鳴られ、訳が判らないというクラウスさん。けどルーシエさん、それには俺も同意見だ。 そんな感じで朝食は今日も賑やかです。 朝食後、準備を整えて医療所を後にする。念の為、最低限の武装も忘れない。 「それじゃあフリージア、出発しようか。」