※このおまけは「アムリタ編」終了後のお話です。  本編が重いのでここでちょっとティーブレイク。  のんびりほのぼの軽い話でも如何でしょう? -----------------------------お ま け @----------------------------------------------  今日は日曜日。午後8時から午後10時の間はけたたましく神の声が聞こえる日。  神の声、要するに砦を取ったコールの声だ。 「…しっかし、すごいなあ。また『クロニクル』がコールされてる」  取った砦のギルド名が流されると、リディックは感嘆の声を上げる。 「オレが前いたギルドは弱小レースしてたくらいだしなあ」 「GvGなんてなんか怖そうじゃないですか…」 「オレらにとってはそうかもしれないけど、プレイヤーにとっては人と競い合うのを楽しみにして る連中もいるんだってさ。ま、中には黒いギルドもない事も無いけど」  家の中でまったり過ごしている彼らの耳に最近良く来る二人組みの聖職者が訪れる。  リリアとカイの二人だ。  先にWISで連絡をいれているため、二人の来訪に戸惑うことなく家に入れる。 「いやあ、相変わらず日曜日は元気だよね〜」  開いたソファに座りながら、カイは差し出されたカップを受け取った。 「あ、またクロニクル、ブリタニア取ってる」  リディックの言葉にカイはうん、と頷いた。 「砦持ちの防衛ギルドじゃなかったっけ?クロニクルって」 「レースもやっているんですよ。優秀な人材が多く、神器も有数所持しておりますし。  同盟も力のある方ばかりですわ」 「リリア知ってるんだ」 「ええ。ギルド実装時に作られた大手ギルドですもの。Gvのみならず、通常の狩りでも皆様礼儀 正しい方ばかりですわ」  リリアはプレイヤー時代の臨時経験を思い出し、小さくため息をついた。 「現在、マスターが休止中と聞きまして、少々心配になっておりますの」 「マスター休止でもGvは普通にやってるんだなあ」 「いえ、元々クロニクルのマスターはGvにはあまり出ない方ですのよ。  それでも人望があるのですね、今でもクロニクルからは不穏な話を聞きませんもの」 「…リリアさんは随分ご存知で…」  席に座ったリリアにルフェウスが紅茶を差し出すと、リリアは当然ですと拳を握り締めた。 「流石にパスワードのあるギルドHPは入れませんけど、鯖板で取り上げられる情報は全てチェッ クしておりますのよ!?  ああ、憧れのルディ様。オーラではないとは言え、その優しさ、プレイヤースキル、小さな気配 り、資産全てにおいてすばらしい方ですわ。  聞けば配偶者もいらっしゃらないようで、わたし、俄然狙っておりますの!」 「………そ、そう…」  ルフェウスはそのリリアの様子に頬に一滴の汗を垂らしながら頷いた。  ……あれ?僕、この人と会ったことあったっけ…?  記憶の帳簿を開き出す。もともとそんなに物覚えの悪い方でもないが、流石に会った人全部を憶 えていられるほど脳のキャパシティは多くない。 「リリアってこっち来る前はそのギルドにいたの?」  カイの言葉にリリアは残念そうに首を横に振った。 「いいえ、同盟にすら入れませんでしたわ。それだけ厳しいところですもの」  思い出すのはクロニクルのギルドに枠は開いてないかと聞き出したあの頃。聞いたところでギル ドメンバーを募集してないため残念ですがと断られたあの日。 「わたし、それでも諦め切れなくて毎夜毎夜愛をWISで伝えましたの」  ………あれ?それ、非常に記憶にある…。  決まって10時、『愛してます』の一言がWISで綴られる。それが約1ヶ月、毎日決まって1 0時。自分がログインする時間は夜の9時から11時の2時間と、たまに昼間にも入るくらいだっ た。  毎晩毎晩たった一言『愛してます』というWISに半ば心霊現象かとログインを控えたくなった が、しかしその時間以外にはなかなか時間もとれず、それにギルドマスターの身、ギルドメンバー の様子も気になりログインを控えることも出来なかった。  しかし、記憶が確かであれば名前は全て違っていたはず。 「でも、わたし、恥ずかしかったので、アニバーサリーパックを買ったときについてきた新アカウ ント用のプレイチケットで新キャラ作って囁いておりましたのよ。  メインアカウントはキャラスロットが埋まっておりましたので」 「うわー、愛だねえ」 「……それって、意味あるのか…?」 「は、はは…」  ルフェウスは力なく笑う。その笑いに黒いものが潜んでいることなど、誰も気が付かない。 「どうしたんですか?ルフェウスさん」 「………ちょっと、外いってくる…」  引き攣った笑みを浮かべながら、カートには大量のマインボトルを積めルフェウスは外に出て行 った。  翌朝、朝刊片手にラルはその1面を見る。 「昨日プロの下水、盗虫一時全滅したってさ」 「…モンスターサイドストーリーのあれじゃなくってか?」  ラルはその言葉に頷く。見出しには下水の壁には焦げた痕が残っているというものだった。 「そういや、ルフェウスは?」  今だ部屋から出てこない、主夫の存在に気が付いて問いかければ、扉ごしから聞こえた弱々しい 声を思い出す。 「気分が悪いからって部屋に引き篭もってるってさ。  珍しいよな」  まだ二人はルフェウスがクロニクルのマスター、ルディだという事実に気が付いていない。 ---------------------------------------------------------------------------------------- 117:平たく言うと『クロニクル』ってこういうギルドなんだよって話を書きたかっただけです。   因みに117はGv経験皆無なので想像でしか書けません。   実際はどれだけ情熱を傾けてるかすらわからないので、Gvってこうじゃないよ!って思われ   るかもしれません。   因みにケミの人のマスターキャラはLKかパラあたりだと思われます。   しかしそうなるとギルドマスタースキルが使えなくなるわけで…。   きっと防衛等は同盟の方が行なっているのでしょう。