『ルーシエ、聞こえるか?』 「少し休んでるくるから」とみんなと別れて少し一人で丘の上から祭りを眺 めていたところだ。突然、グレンからwisが入る。 『グレン、どうしたの?祭りには来てるの?』 『あぁ、楽しんでるぜ。ところでちょいと頼みがあるんだが・・・』  頼みとはなんだろうか。聞いてみると売り子をやってくれないかとのこと だった。二つ返事で了承したもののふと思う。昨日今日とあれだけの立ち振 る舞いをした私に売り子が務まるのか?逆に客が逃げないだろうか・・・。  一応、そのことを伝えてみた。 『――てな事をやっちゃってるわけだけどいい?』 『ちょwお前あのパフェ完食したのかよw』 『完食したのは私と朔の二人だけどねー。あの後店主が泣きながら何か張り 紙作ってたみたいだけど』 『あの張り紙はそういう意味かよ・・・』 『まぁ、とりあえずやってみる?場所どこー?』 『あぁ、場所は・・・・』  グレンの指定した場所に行く前に弓手村のカプラに寄る。とりあえず売り 子する間はイメチェンしてみよう。装備は何があったかな・・・? 「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」 「あぁ、私の倉庫の物品リストお願いします」 「かしこまりました。こちらになります」  手渡されたリストを見れば・・・あったあった。少しでも女の子らしい格 好していかなきゃね。 「コレと・・・コレお願いします」 「かしこまりました。こちらですね」  すっと手渡される品物達。。えっと、今どこから出しました?まあいい。 これをつけてっと・・・。 「グレンー、お待たせー」 「誰だお前」  開口一番にいわれた言葉はそれだった。装備変えると印象結構変わるよね。 いや、そうじゃなくて・・・。 「呼び出しておいてそれは非道くない?」 「いやいや、冗談だ冗談。しかしなんだその格好」  今私はいつものミス冠と悪魔羽耳を外して赤いリボンと妖精耳をつけ、後 ろ髪をハーピィスタイルのようにクリップでまとめていた。 「売り子するなら少しでもおしとやかにしとこうかと・・・」 「まぁいいや。ちょいと試食してみてくれ」  売り物は炙り餅に蕎麦をメインに出すらしい。あくまでも狙いは冒険者よ り一般客。私は手渡された炙り餅を食べてみる。 「甘くて美味しい。これいけるんじゃない?」 「だろう?コイツが今日の主力だ。おっちゃん。机と椅子、いくつか借りて もいいか?」 「おぅ、いいぜ?人が増えりゃぁこっちにも漁夫の利がでてくらぁ」 「いらっしゃいませー。炙り餅にお蕎麦はいかがですか?美味しいですよー」  そんなわけで、グレンのお店は開店した。客足は順調。ものめずらしさに お客さんが寄ってくる。ちなみに私の装備変更は無駄だった。バレバレであ る。だが逆に一部では『タナトスタワーを制覇してクルセイダーをぶっ飛ば すほどのプリーストが認める甘味どころ』ということで話題になっている ・・・らしい。さっき、セクハラしてきた客をぶっ飛ばしたら歓声があがっ た。いや、ちゃんと手加減しましたよ?冒険者だったし大丈夫でしょ。しか し聖職服にエプロンとはコレ如何に。いや、意外と悪くないから困る。メイ ドの前掛けみたいなフリフリ付だけど。 「グレンー、炙り餅3、蕎麦2追加ー」 「了解、もうすぐあがるぜー」  愛想笑いを振りまいて、食べていくお客のオーダーを取り料理を運ぶ。接 客業は昔バイトでやったから問題ないぜ!客をぶっ飛ばすのはどうなのよ? って聞かれると・・・まぁ、あれだけど。  不意に、隣の店は大丈夫なの?とこっそり聞いてきた客がいたので 「隣の海鮮鍋、においは確かにきついですけど、食べてみたらこれがなかな かやみつきになる味なんですよ〜」  と、さりげなーく薦めてみたら、食べに行ったそのお客が 「うーまーいーぞーーーーーー!!!!!」 と、口から光を放ち、バックに岩礁にたたきつける荒波を背負ってるんじゃ ないかと思うほどの雄たけびを上げていたのには少し笑った。あの人ならど こぞの王様のように海の上を走れるんじゃないか?まぁ、そんなことも重な ってか隣も中々繁盛しているようだ。  口コミとはすごいものである。客が客を呼び人が集まってくる。めまぐる しいほどの忙しさ。私は接客、グレンは商品作りに大忙しだ。もう少し人手 が欲しいところであるが・・・あ、はい。かしこまりましたー。グレンー! 3番テーブルに炙り餅4個追加ねー!