「ルクスさん、僕の所持金を見てくれ。こいつをどう思う?」 「すごく…金額不足です。」 テーブルの上にばら撒かれた10zenyコイン4枚と1zenyコイン枚。 決してこれは俺にこの場でフリップザコインをして欲しい訳ではないだろう。  ―つまり現在の所持金がこれだけという事か。 そこで俺はどうやってこの問題を解決しようかと考える。 『俺が奢って〜』と言うのは簡単ではあるが、きっとノウンさんは拒否するだろう。 それが現金に変わっても同じ反応である事は予想が付く。  ―となれば、少々策を弄するか。 幸いここは露店だけどケーキショップ、テイクアウトも可能だ。 俺はノウンさんにお金をしまって貰い、談話中のエリーさんに声をかける。 「エリーさん、今すぐチーズケーキ1ホールをお持ち帰り用に梱包してもらえます?」 「あ、はい。ちょっとまってくださいね。」 言うが早いかエリーさんは席を立ち、ケーキを梱包し始める。 他の皆は俺の突然の行動に不思議な顔をしている。 「どうぞ〜」 箱詰めにされ、袋に入れられたケーキを受け取る。 そして俺はノウンさんに向き合う。 「さてノウンさん、ここにお土産用ケーキがある。  折角のお祭だと言うのに仕事をしている医療所の居残りスタッフへの差し入れにしたいのだけど、  あいにく俺はここを離れられない。  そこで、だ。俺等の代わりにこのケーキを医療所まで届けてくれないかな?  無論報酬は出す。成功報酬5,000zenyでどうだ?」 いきなりの発言だ、皆が何事かと見ているのが判る。 もしノウンさんがこれを受けてくれたのなら、往復の間にでも理由は説明しないとだな。 頼むぜノウンさん。俺の真意、読んでくれよ。