「「「「「乾杯〜!!!」」」」」 祭といったら酒だよな、火照った体に冷たいビールは格別だ。 とはいえ、俺は元の世界ではそこまで飲まないから1〜2杯で済ませるつもりだ。 そう、2杯目を飲むまではそう考えていたんだ。 「櫓が燃え尽きたら祭りも終わりかぁ。」 「そうだな。短い期間でよく此処まで作れたよな。」 「フェイヨンの人々も、この祭には思いを込めていたんでしょうね。」 「俺もそう思うよ。」 ノウンさんの一言で頷く。 この祭には、いろんな人々の思いが込められているのだろう。 ―ある人は魔物討伐の勝利の美酒に浸るために ―ある人は金稼ぎの場を欲するために ―ある人は純粋に祭を楽しむために ―ある人は亡くなった愛する家族の冥福を祈るために ―ある人は明日を踏み出すための活力とするために たくさんの人の思いが集まり、祭として成功したのだろう。 俺の…いや、俺達が少しでも祭に協力出来たのなら、こんなに嬉しい事は無いだろう。 櫓を組んだり出し物をするだけじゃない、参加する事だけでも祭に一役かったに違いない。 「しっかし、ルーシエと如月には驚いたよな。まさかあのパフェを完食するなんてさ。」 人が感傷に浸っているのに、急に現実に引き戻された気がする。 「僕もあんな量のパフェを食べきれるとは思いませんでしたよ。」 「あのパフェは凄かったですよね。しかも目の前で2人も完食するとは思いませんでした。  私も少し食べたかったかな。」 「わたしも〜」 「おいおい、タナトスタワーは駄目だぞ。」 まず食べきれないだろうし、失敗時の罰金500,000zenyなんて洒落にならん。 「あんた等、あのタナトスタワーを完食したプリの知り合いか?」 俺達が話していると隣の席(俺の真後ろの席)から声がかかる。 振り返ると逆毛騎士にグラサンタバコの♂プリースト、羽帽子をかぶった♀ハンターが座っていた。 祭に来た冒険者だろうか? 「ああ、彼女は俺達の知り合いだけど…そんなに有名なのか?」 「有名も何も、あのパフェを完食した奴って3人しかいないんだぞ?  しかもそのうち2人が細身の女プリと女忍者といったら話題にならない方が嘘だろ。」 それぐらいわかるだろとプリさんが捲くし立てる。 俺的には三人目が気になるのですが。 「それで、今は一緒じゃないのか?」 「ああ、プリの方はあのパフェを食べた後は分かれて行動してるからな。  忍者の方はその後少ししてから分かれたかな。2人の行き先は俺は知らない。」 「そうか、だからか。」 「…?どういう意味だ?」 「そのプリと忍者の2人は、つい先刻まで蕎麦屋でエプロン付けて給仕をしてたんだよ。」 「蕎麦屋で?」 「ああ、俺らその店に寄って食べていたから間違いない。」 なるほど、それで急に居なくなったのか。 けど2人とも給仕してたって事は、少なくとも知人の店だろうな。 てことは俺が知らない2人の知り合いがまだ居るって事か。 「それで、2人の給仕姿はどうだったんだ?」 にょっと顔を出してクラウスさんが割り込んできた。 「貧乳エルフ耳プリたんテラモエスwwwwっうぇwwww」 「ほほう、ナルホドナルホド…」 クラウスさんと逆毛騎士とで会話が成立しているようだ ところでその芝生はどうやって発音しているんだ? 「プリたんいいパンツしてたwwww」 ドス 「アンタが貰ったのはパンツじゃなくてパンチでしょ、このエロ騎士!」 「ごめwww間違えたwwwプリたんいいパンチしてたwwww」 ハンターの娘が逆毛騎士に突っ込みを入れる。 ちなみに先程の鈍い音はオリ矢が逆毛頭に刺さった音だ。 「え〜と、頭から血が出てますよ?治療しないと…。」 「ああいいのいいの。この馬鹿は血の気が多いからこれ位でちょうd「貧乳看護帽アコたんキター━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!」 ドスドス 「一生死んでろ、この直結変態馬鹿逆毛!!」 ダブルストレイフィングが見事に直撃する。 普通なら死んでるよな? 「ああ気にしないでくれ。ウチじゃあ何時もの事だから。」 煙草の煙を吐きながら何事も無かったかのように話すプリさん。 そういえばクラウスさんもルーシエさんのラリアットを何発も食らっているのに生きてるし、剣士系は特別丈夫なのだろうか? 「折角知り合ったのだから一緒に酒でも〜と言いたい所だが、あいにく俺らはそろそろ帰らないといけないのでな。」 「そうなのか?そいつは残念だな。」 「ああ、縁があったら飲もうぜ。ほら、さっさと起きろ」 そう言いながらプリさんは血を流しながら倒れている逆毛騎士にヒールをかける。 「今wwwwwwここにwwwwww斎w京wのw岸www復wwwww活wwwwwwww!!!1!!!!!!」 おいおいどう見ても瀕死…というか死んでいるようにしか見えなかったのに、ヒール一発で蘇るのかよ。 ROの騎士は化け物か?それとも逆毛騎士に限ってこうなのか? 「うはwwwっうぇwwwwww俺w様wwwwwww斎wwwww京wwwwwwすぎwwwwっうぇww  修w正wさwれwるwねwww!!!11!!!!」 「いい加減静かにしないと、強制的に黙らすよ?」 ハンターさんが弓を構える。 「二人ともそれぐらいにしとけ。これ以上遅くなるとうちのマスターに叱られるぞ。」 「チッ」 「wwww」 露骨に舌打ちしつつ弓をしまうハンターさんと、取りあえず静かになった逆毛騎士。 だからその芝生はどう発音してるんだよ。 「それじゃあまたね。」 「うはwwwおkwwっうぇ」 「機会があれば会うこともあるだろう。それまで達者でな。」 そして俺の横を通りながら会計所へと向かう三人。 「じゃあな、異邦人の。」 その瞬間、俺にしか聞こえないような小声でプリさんは言い放ち、去っていった。 俺は平静を装いつつ、グラスに手を伸ばす。  ―あのプリースト、俺が異邦人だと見抜いていたのか?   俺が異邦人だと知っている人なんてそんなにいない筈だ。   マリーさんや他のみんなが話すとも思えないし、何者なんだ…― 無論いくら考えても判る訳がない。 考えがまとまらない分、酒の減りが早い。 そして恐らくこれが原因だったに違いない。 「っと、そろそろ追加しないとだな。すいませ〜ん!」 店員を呼び、追加オーダーを頼む。 そして運ばれてくる品々。 「あれ?このチョコ誰が頼んだ?」 「俺じゃあないぞ。」 「僕でもないです。」 「私は違いますよ。」 「わたしもたのんでいません。」 皆ではてなマークを浮かべていると、カウンターからマスターが話しかけてくる。 「そいつは俺からのサービスだ。  嬢ちゃん達には酒が出せないからな。そいつで勘弁してくれ。  ここの特製チョコなんだぜ。」 「わぁ、ありがとうございます。」 「ありがとうございます〜。」 ここのマスター良い人だね。 しかしさっきからクラウスさんとノウンさんの酒の進みが遅い気がする。 「2人とも酒が進んでないぞ?」 「えっ、ああ。ノウンとこの料理うまいな〜と話してたからかな。」 「そっ、そうそう。このフェンの刺身なんて美味しいですよ。」 確かにここの料理は結構いける。 しかし、こいつらは判ってない。 仕方ない、ここはこの俺が一肌脱いでやろうじゃないか。 「あのなあ、肉屋で花を買う奴はいないだろ?同じ様に酒場では酒を飲むのが礼儀、だ。  そもそもお酒というのはだな…」 ―15分後 「…と、言う逸話まで出来たんだ。判るか?」 「お、おう。勿論だよ。」 「流石ルクスさん、物知りですね。」 まったく、やっと二人とも少し判って来たみたいだな。 ふとフリージアたちの様子を見ると、二人でなんか話しているようだった。 なんか「男ってば、本当に鈍感だよね〜」とか聞こえるけど、今はクラウスさん達に酒の良さを教える方が先だな。 「そもそも酒場を指定した以上、飲まないでどうするんだ。」 「いや、まあ、それはそうだけどな。」 「あ、あの…ルクスさんもお酒は程ほどにした方が…。」 まったく、ノウンさんは本当にわかっていないな。 「いいかぁノウン。お酒なんてぶっちゃけ水と同じだ。  某海軍では水の変わりにビールを使っているという話まであるぐらいなんだぞ?」 「それはたとえが違うのでは…」 ああもう、ああいえばこういう奴だな。 「つまり、こうした方が飲みやすいか?」 俺はグラスを持っていない手で銃を抜くと標準をノウンさんに向ける。 「えっ、ええ!?」 「…ぷっ、くっ、あはははは。冗談だよ、じょうだん。第一弾丸なんて入ってないし。」 証拠にと空に向けて一発放つ。無論空砲だ。 「そんなに怯えるなよ、弾丸が入っていない銃なんてただの鉄塊だ。  そもそも銃の歴史は…」 ―30分後 「…とまあ、そういう訳で銃が武器として扱われるようになったんだな。っておい、お前等聞いてるのか?」 「ルクスさん、クラウスさんにハイペースで飲ませすぎですよ。もう4〜5杯は飲ませてますよ?」 「何を言う、まだ4〜5杯だぞ?俺なんて既に7杯は飲んでるわあ。」 まったく、この程度の飲酒で倒れるとは情けない。 何かうわ言を言っているけど、言っている内容が支離滅裂だ。 「いいかノウンさん、『酒は飲んでも飲まれるな』だ。よく覚えておけ。」 「え、あ、はい。」 そして俺の説明が始まる所で、見知らぬ商人が近づいてくるのが見えた。 「ミーティアこんな所にいたのか。探したぞ。」