こんこんと眠り続ける。  いえ、寝てるんじゃない。ただ目を閉じて横になっているだけ。  ばらばらに砕けてしまった心の欠片。感情も意思も砕けてしまってそこに散らばる何千とあるそ のピース。 「あなたの心に触れるのは本当に申し訳ないけど。  ごめんなさい。でも、絶対に治して見せるから」  手を握って目を閉じて意識を落とす。  心の中と言うのは闇の様で闇じゃない。  黒のように見えるけど、ただ1色の黒じゃない。いろんなものが交じり合って出来た色。不思議 な深みのある色。  虚空に漂う光の粒、本来は一つの球体でそれは人の精神を表すものだと聞いている。  とても脆くて簡単に壊れてしまう。  だから優しく丁寧にその粒を集めて、そして繋ぎあわす。  光に触れた瞬間、彼の心が私に入る。何を見て何を考えたか。 「…私、酷い人だね。  リディックさんの気持ち、盗み見してる…」  呟いて地面はないけどその場に座り込む。 「許して欲しいなんて言わない。軽蔑されても構わない。だけどリディックさんがいない事実は私 は耐えられないから」  ―――好きだから。  散らばった欠片は集めても集めても纏まらない。きちんと正しい順序じゃないと繋がらない。  何千ピースのジグソーパズル。繋げて初めてその全貌が見えてくる。  この世界に時間の概念はない。  どれだけの時間が経ったのかわからない。  すこしずつ集めて繋げて、光に触れるたびに見えてくる情景。徐々に纏まっていくその形。  その時私はその最後の記憶に手を触れた。  壊れてしまったその心では記憶は刻めない。だから最後の記憶は壊れてしまうその直前の記憶。 「――――っ!!!?」  何!?何なの!?こんな、こんな恐ろしいこと!!  入り込んだ記憶はそれはとても恐ろしく、おぞましい。  私はそれを見ているだけなのに、吐き気を催してしまうほど苦しく、怖い。 「…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…!」  ガタガタと震えて堪えきれずに涙が零れ落ちる。  いらない、こんなもの。こんなものあってはいけない…!  人の記憶を改竄するのはとても罪深いものでも、それでもこんな記憶などあって良いわけが無い。  …消えて!  その部分を切り取るように意識する。それを押さえつけるように、潰すように。  記憶と言うのは簡単に消えるものじゃなくそれは反発する。それでも止めずに負けないように押 し続けて、そしてややあってそれは消えた。  どっと疲れがくる。肩で息をして消してしまったそれを確認してみればそれは闇に漂う塵として 霧散していた。 「これで、いい」  しかしまだ終わりじゃない。欠片はまだ残っているのだから。  再び欠片を集めて…私は気が付いてしまった。断続的に流れる意識、その中で彼が私をどう見て いてくれたのかを。 「……そんな」  嬉しい?…哀しい?  でも、私はそれを受け入れてはいけない。  受け入れてしまったら、決心が鈍ってしまうから。  だからこれからも今までどおり。  ―――何故私がこの世界に来たのかは絶対に伝えるわけにはいかない。