医療所に戻った俺とフリージアは、報告の為にマリーさんがいる所長室へ来ていた。 ルーシエさん達は部屋の方に行ったみたいだ。 コンコン 「ル…ひかるです。」 「どうぞ。」 ガチャリ 部屋に入ると珍しくマリーさんが書類整理をしていた。 「ひかるちゃん、今、失礼な事考えなかった?」 「イエ、ソンナコトナイデスヨ。」 相変わらず鋭い人だ。 ここはさっさと本題に入った方が良いな。 「野菜の買出しは無事に終了し、食堂のおばちゃん方に渡してきました。」 「そう、御苦労様。」 「あと、八百屋の主人より『よろしく』と言伝を仰っております。」 「確かに最近顔を出してないしね。後で顔でも見に行こうかしら。」 「報告は以上です。それでは失礼します。」 俺は報告すべき事を伝える。そしてマリーさんに一礼し、部屋を出ようとドアノブに手をかけた。 「待ちなさい。」 しかし回り込まれてしまった!…もとい、マリーさんに引き止められた。 「ご用件は何でしょうか?」 「率直に聞くわ。貴方達から見て、貴方達を見た患者達の反応はどうだった?」 ルーシエさんとか他のスタッフに聞けばいいのに、それを何で当人達に聞くかなあ。 解答拒否しようとも考えたけれど、マリーさんの真剣な表情を見て考えを改める。 「患者、スタッフ問わずに見惚れていたりしてます。自分の正体を見破れた人は殆ど居ませんね。」 「私の解答もひかるちゃんと同じです。可愛いと言う人は結構な人数に上ります。」 「そう、反応は上々といった所ね。」 成程、物差しがわりに使われたって事か。 「2人ともご苦労様。お昼までは休んでいて構わないわ。  午後はフリージアには通常業務を、ひかるちゃんは清掃をメインに頼むからそのつもりでお願いね。」 「畏まりました。」 「わかりました。」 俺たちは今度こそ、部屋から退室した。 「さっきのマリーさんの質問、何だったんでしょうね。」 「…おそらくは患者の状態…そう、カルテ上では見えない面を知りたかったのでしょう。」 「カルテでは見えない部分?」 「本当に死にそうな人が多いのなら、私達の姿を見ても何とも感じないでしょう。  私達に多かれ少なかれ反応するという事は、それだけ余裕が出てきた証とも取れます。」 「昨日の罰に加えて、そんな目的があったなんて…」 「無論スタッフからの報告だけでも十分な確証はあるに違いありません。  それを更に一歩踏み込んだ情報なのでしょうね。流石はマリーさん。  私は今更ながら、彼女がああ見えてプロフェッサーなんだなと再認識させられましたよ。」 「という事は、近日中に医療所撤退の可能性も?」 「その可能性は高いですね。私の予想を言わせて頂くならば、明日全員に通達で、明後日明々後日あたりではないかと思います。」 「そう…ですね。患者さんたちも元気になってきましたしね。」 「ええ。その通りです。」 医療所撤退になれば俺も冒険者に戻るだろう。それまでに出来る事は、やっておかないといけないな。