始めに。 この文章を読むときは各自コピーしてメモ帳に貼り付け、"右端で折り返す"にチェックを入れ、読みやすい幅で読むことを推奨しておきます。 ”*”が横に並ぶくらいにすると読みやすいかもしれません。 **************************************** ――ペナルティ―― 「レナさん、入ってきて良いわよー♪」  マリーさんの声にレナがドアを開けるとそこには顔を赤らめて身動ぎするBSの姿があった。 「えっと・・・ママ?」 「えぇ、そうよ!ばっちりキマってるわよね!」  そんなわけで私は今BSの衣装を着せられていた。髪は結って今はポニーテールになっている。この格好では今まで着ていた服よりも大分露出が多い。ていうか、コレ・・・強調される部分が私にはないわけなんだけど・・・。  私は自分の姿を鏡に映す。フラットな身体のラインがほぼ露出状態だ。・・・いや、プリの法衣もスタイルは浮き彫りになってたけどさ。スリット入っていようが基本肌を晒す部分は少なかったんだ。  改めて他のリアル達が着ている服を思い出し、よくもまぁリアル男であの服着て恥ずかしくないよなと思うよ。いや、感嘆するね。コレがまだスナイパーとかだったらココまで強調することもなかっただろう。ハンターだと逆に悲しくなれそうだけど。  この服、引っ掛かりがないから油断するとずれ落ちそうな気がする。周りに晒すなんて私は嫌だぞ?  いや、どこのこととかいいませんけど。 「アコライトやモンクの服でもいいかと思ったんだけどなんだか物足りなかったから!」  いや、ちょっとマテ!何でそんなのがありながらこんな露出の高い服なんですか?!おへそ丸出しですよ!? 「あら、不満?なんならダンサーやジプシーの格好のほうがよかったかしら?それともナイトやアーチャーみたいなスカート短いのがよかった?」  ・・・コレで良いです。どうしてこんなことをするのかと聞いても彼女はきっとこう答えるに違いない。 『似合いそうだから!』  あきらめた感じの顔を前面に押し出すが、マリーさんはそんなもの知らん顔でレナに近づいていく。その手にはどこかで見たことある服が・・・。 「レナさーん、コレ、着てみない?」 ****************************************  今私の隣にはキャッキャとはしゃぐレナの姿。何が違うってその服が♀商人のものになっていることだ。そのちんまりとした商人姿を見ているとミーティアのことを思い出す。  そういえば夕べは酔っ払ったままフリージアと何か話していたが、無事に帰途につけたのだろうか? 「あの、マリーさん?いったいこんな衣装どこから持ってきてるんですか・・・」  私はそんな疑問を投げかけてみる。が、 「あら、そんなの気にしちゃ駄目よ?」  禁則事項と言わんばかりの言い回しだなコンチクショー。  でもまぁ私は兎も角、レナが楽しそうだからいいか。  ――ところでこれって職詐称とかでお縄にならんのだろうか?ただソレが心配だ。  私はため息ひとつつくとレナの手を引いて部屋を後にする。後ろから「その衣装はここを撤収するまで着てなくちゃだめだからねー!」と言うマリーさんの声。  まったく、先ほど感じたプロフェッサーとしての威圧感はなんだったのか。拍子抜けも良いところだ。  これじゃペナルティじゃなくてただの嫌がらせとしか思えない。少なくとも、後日ルクスからこのコスプレの意味を聞くまではそう思っていた。  一旦食堂に戻ると如月とクラウスはどこかへ行ってしまったのか見当たらない。クラウス辺りは屋台を返しに行ったのだろう。如月は・・・何してるんだろう?もしかしたらうっかりマリーさんの毒牙にかからないとも限らない。それだけが心配だ。  私は手短なスタッフを捕まえるとマリーさんから部屋の掃除をするように言われたと伝え、どこに向かうべきなのかを問う。が、声をかけたスタッフはしどろもどろしていた。なんというか、『なんでBSの人がこんなところの手伝いをしているの?』というところか。  各ギルドから応援は来ている。ただし、それは町単位で見た場合であり医療所への手伝いは剣士ギルドやジュノーのアカデミー、プロンテラ大聖堂などからの応援である。商人系ギルドは資材運搬などがメインだった訳だからここにBS姿の私がいることがおかしいのだろう。剣士ギルドからも資材運搬メインでこちらの手伝いに来る人間は少ないといっておく。INT型クルセ、パラディンなどは数人いるようだが、ほとんどは町の警備に当たっている。  困惑の色を隠せないまま、それでもしっかりと教えてくれたその人に感謝しつつ私は今手の空いているスタッフで片付けているという部屋へと向かう。  向かう途中、人の視線が痛い。この時ほどマリーさんやローウィンのスタイルを呪うことはなかったろう。この身体になって度々思うこの残念な気分というか焦りというか。女性の悩みというかそんな感じのアレ。  気にしないどころかむしろそっち好みだった私はどこにいったんだろうか?いや、実際自分がそうなるのと見るのでは大分状況が変わるってモノだが。  部屋に着くと数人のスタッフが片付けをすでに行っており、入ってきた私に目もくれず掃除している。私は指揮を執っていたハイプリーストに声をかけ、マリーさんの指示ということを伝えると、困ったような顔をしつつ「大変ですね」と一言だけ私につぶやくと私を含めた全員に再び指示を飛ばし始めた。レナは片づけをしている私の元へ来て手伝いを始めたものの、まだ大絶賛AGI先行中につきSTRが低い為重いものはもてなかったがそれでも一生懸命に私達の仕事の手伝いをするレナになんとも言えない感情を覚えつつ、いくつも部屋を変えながら夕方になるころには無事に予定されていた全ての部屋の掃除を終えることとなった。