あれからどれだけの時間と月日が経っただろうか。 何時の日かフェイヨンでのテロを共に食い止めた戦友達よ、俺の名前はフレンドリストに残っていますか? ………… すいません、愚問でした。いつぞやのクリップデコプリースト、エルミドです。(思い出したら再登録宜しく) 最後の報告から数ヶ月挟んだが、フェイ事件後の活動報告も兼ねて今までの出来事をさらっと振り返ってみようと思う。 事の始まりはある日目が覚め(ry)だったわけで、要するに気が付けば俺は白髪♂プリーストの姿で プロンテラの宿の一室にいた。突然右も左も分からぬ世界で、唯一の情報源だったのが今見てもらっている 『伝言板』なんだけど…。この伝言板は”こちら”側でも”現実”側でも見ることが出来るらしい。 そこで、俺は伝言板を通じて現状報告とこれからどうすればいいか、アドバイスをもらうことにした。 …返答を待っている間に宿で見かけた美人のアサクロ(伝言板の利用者だったんだが)を追いかけて 何時の間にかイズルードに来ていた、という武勇伝は無かったことにして頂きたい。 とは言ったもののその後もトラブル続きで、イズルード港では船乗りに拉致されるわ、 運ばれた先のアルベルタでフェイヨンのテロを知り、嫌な予感がしたと思えば案の定ポタで飛ばされるわ、 それで行き着いた先が何故か弓手村ではなくフェイヨンDで、それからなりいきで魔物討伐に 駆り出されるわで、色々と散々な目に合った。今生きているのが不思議なくらいだ。 だが、もっと理解できない出来事があったのはその数日後、フェイヨンで催された鎮魂祭でのこと。 事件で犠牲になった人や魔物の魂を静めるための行事だったのだが、その晩俺の目の前に現れたのは 先日大暴れした魔物達…の魂であった。見るも無残に殲滅された恨みを一プリーストにぶつけるのかと思いきや、 相手は意外な言葉を発してきた。(言葉を発したのも意外だったけど) 魂共の一匹が言うには、今回のフェイヨンの事件はゲーム上であるような古木の枝によるテロではないらしい。 しかしこの世界の管理者が企てた”イベント”としては、本来必ず冒険者に伝わるはずの”襲撃告知”が 今回は伝わっていなかったという。実はこういった出来事がフェイヨンまでの規模でないものの 世界各地で起こっているようで、魔物達も予期せぬ異変に戸惑っているらしい。 そこで異変について調べる為、自在に世界を回ることの出来る冒険者に協力を頼もうということだった。 (今思えば何故俺だったのだろうか、たまたまそこに居たから?) 彼らは一定期間、つまり倒されてまた復活するまでの魂の状態なら、一緒について調査に行くことが出来るそうだ。 俺は「元の世界に戻る手がかりも見付けられるかもしれない」と、狐の魔物にそそのかれて その依頼を承諾してしまったわけである。これから一体どうなることやら。 …と、ここまで伝言板に書いた報告を大体まとめたもの。 中途半端に長いが、簡潔に言うと俺は魔物に取り憑かれたプリーストです。以上。 さてこの後は鎮魂祭から数日後、フェイヨンからイズルードに戻ってきた時からの報告。 ---------------------------------------------------------------------------- 最初にゾンビが付いてきたときは人生の終わりかと思ったが、数日経ったらポポリンに交代し、 人から見えないペットだと思えば別段気にもならなくなってきた…気がする。 『Yo、ニイチャン。LOOK!今日は果物屋でジュースの特売があるぜ』 ただ魔物が喋るというのは未だに違和感がある。(そういやペットも喋るけど) しかもポポリンのくせして随分ファンキーだ。 「それよか、話の聞けそうな場所に行きたいな」 『んん?そうだな…港なら人が集まってるんじゃねぇ?』 港… 「いや、それ以外で」 「Why?我侭な奴だな。なら、カプラのネエチャンの所は?」 「そこだ、そっちに行こう」 半ばトラウマになった場所から遠ざかるべく、商店広場からカプラ職員のいる街道へと足を運ぶ。 『Oh、いるないるな。人間だらけだ』 「ここなら冒険者も多いし、何か聞けそうだ」 というわけで早速聞き込み開始。 「Q.最近起こった魔物の暴動について何か知ってますか?」 ・ああ、知ってるぜ。ってかプロ南平原に行けば頻繁に見られるだろ。  深淵とかヤファとかゴスリンとか(以下略  (Lv92騎士・男性) 『これは普通に枝テロだな』 ・昨日グラストヘイムで酷い目にあったわよ!  騎士の引き連れた魔物が騎士のテレポと同時にアタシの所に! (Lv88ローグ・女性) 「そ、それは魔物の暴動というより…」 ・うはwwwwwwwwそれ俺俺wwwwwwwwwwwwwwww  夜になるとwwwwwつい暴走しちゃうんだよねwwwwwwww俺のモンs(バキャッ …… 「結局これと言って有力な情報が得られなかった…」 『まあ、オレらんとこくらいの規模じゃないと中々気付かれにくいだろうぜ』 「やっぱり首都に行ってみるしかないか。あっちもあんまり行きたくないんだけど」 『オレは好きだぜ?一番活気のあるところじゃねーか』 「活気がありすぎるのが問題なんだよな…」 そう言いつつ、渋々平原へ続く橋を渡…ろうとして、足を止めた。 ふと柱に寄りかかって座り、肩で息をしているノービスが見えたからだ。 プリーストならここでするべき事はアレしかないよな。 『や ら な い (グシャッ 「ヒール!」 ポポリンを片手で握りつぶし(動作だけだがポポリンがノッて砕けた)ノービスにヒールをかける。 怪我と体力が回復したノービスは驚いた様子でパッと顔を上げた。 「え、えと。あ、ありがとう、ございます!」 慌てているのか落ち着いているのか、ゆっくり感謝の言葉を述べるノービス。 ひょっとしてリアル初心者なんだろうか? 「いえいえ、最初の方はポリンも強敵ですからね」 そう言うと、相手がややむっとした表情になる。しまった、違ったか? 「ポリンはもう倒せます!ルナティックも!  …ただ、トードはちょっと早かったみたいです…」 なるほど、カエルも中々倒せなかったもんなあ…って、何? 「トード?ロッダフロッグじゃなくて?」 「え?ああはい。人並に大きいカエルの魔物って聞いたので。  あんなのが束になってかかってきたら一溜まりもないですよ…」 束に…?確かトードは一定時間に一匹しか湧かなかったはずだが。 「その、カエルは皆同じ大きさだったんですか?」 「大きい奴の周りに小さな取り巻きもいたんですけど…  でも大勢のトードが押しかけてきて気にしてる余裕なんて無かったです」 大勢のトード、か。 『Hey!これはアヤシイぜ』 「ああ、調べてみる価値はあるな」 何時の間にか元の形に戻ったポポリンと小声で耳打ちをしていると、 ノービスは溜め息をついてがっくりと項垂れた。 「せっかく友達に紹介してもらった狩場なのに…まだまだ経験不足なのかなあ」 「…焦らなくても大丈夫ですよ。地道に戦い方を身に付けていけば  いずれ目標の狩場で戦えるし、頑張り次第で何処にだって行けるんですから」 「そ、そうですか?」 「だから挫けても諦めずに、楽しんでやればいいと思います」 「……はい!」 再び顔を上げたノービスの表情はさっきのそれとはまるで違い、活き活きとしていた。 その様を見て俺と同じ境遇なのか、そうでないかは分からなかったが 俺は親指を立てて/最高!エモの真似をし、自分の出来るフル支援をかけてその場を去った。 『…言うねぇ、プリースト』 「俺も偉そうに言える実力じゃないんだけどね。目下修行中なわけで」 そう言ってイズルードの街門を潜る。 少し高台になっているその場所からは、延々と広がる平地と海を見渡すことが出来た。 「さて。じゃあ行くか、カエル平原。」 『Yeah!』 行く先で本当に元に戻れる術が見つかるのかは知る由もないけど、 リアルに帰るその日まで、この旅を楽しんでいきたいと俺は思う。 「あ、首都は通りたくないからバッタ平原経由で」 『とんだチキン野郎だぜ…』