レナを布団に寝かせた私は大急ぎで医療所へと引き返す。  如月をあまり待たせるわけにも行かないだろう。  IAをかけて疾走するが、BSの姿で速度増加をつかうのは他人が見れば不正者になるのかもしれない。  医療所に戻った私は如月にまず詫びると私のゲームとしてのROの生活を話した。  旦那のこと、レナのこと、レナの中の人はすでに引退していること。  残された手紙、こちらの世界のどこかにいるであろう旦那の存在。  流石にリアルの私情は伏せたがこの先、医療所撤退後は彼(一応こちらでの性別という意味で)を探しに行くという事も。  それはレナと2人で行う事にしている。これは家族の問題でもあるのだから。  私の話に静かに耳を傾けていた如月だったがため息を一つつくとやれやれといった幹事でこちらを見つめる。 「もう、決めたことなんだろう?だったらわた・・・俺がとやかくいう事じゃないさ。」 「朔・・・。」  私の前で一人称を”わたし”ではなく”俺”といった。その意味に気付き不覚にも泣きそうになる。  ここに来てから紆余曲折しつつも妹のように連れ添った仲だけに。 「妹としての朔は終わり!これからは同じ冒険者として頼むよおね・・・いやルーシエ!」 「これからも・・・仲良くしてもらえるかな?」 「当たり前だろ?知らない仲でもないんだから。」 「・・・ごめん。」 「いいって。そんなに気にされたらこっちのほうが参っちまう。」  ポンッと頭に頭に乗せられた如月の手の温もりが心地よい。気付けば涙が頬を伝っていた。  今生の別れというわけではない。それでも一旦出来上がった関係が崩れるのは悲しいものだった。  同じ冒険者として、共に進むこともまだまだあるだろう。こちらに留まる限り。  しかし冷静な自分がこうつぶやく。あるいは天の声だったのかもしれない。  リアルに戻ったら男通しのバラの展開・・・?いやいや。それは考えちゃ駄目だろ。 「まぁ・・・でもなんだ。ココを発つまでは・・・おねぇちゃんって・・・呼んでもいい・・・よね?」 「当たり前じゃないか!むしろ呼んでください。お願いします。」  少し泣きそうな目で見つめる如月。  あーっと!!!如月会心の一撃!!!ルーシエはダウン寸前だぁぁああ!!! 「ちょ!おねぇちゃん鼻血鼻血!!」 「だいじょうぶだいじょうぶ。すぐにとまるからー(棒読み」  しばらく二人で話しをした後、私は医療所を出て再び自分の家に戻る。  寝室につけばレナが安らかな顔で寝息をたてていた。  その寝顔を眺めているとどこからともなく 『子供は親のこb・・・背中を見て育つと・・・』 とか、  『立派なツッコミキャラに・・・』 とか、『そのうち500%*2の素手BBでツッコミを・・・』 とか聞こえた気がした。  むしろ現状周りにはボケが少ない気もしなくもないが・・・。  暴走気味なのはいるけど。  私はレナの寝ている布団に潜り込むと謎のWisのような助言(?)に頭を悩ませつつレナを抱きしめながら眠りについた。 ********************************************  夢を見た。  ある日のことだ。  ギルメンのHiWIZが私達夫婦に養子縁組を持ちかけてきたのである。  以下ダイジェスト会話のみ。  ゲーム画面上での話しなので特にナニをしていたわけでもないし。  実際その画面を傍観しているような夢だった。 ---------- 「私、なんでもいいから養子キャラやってみたいんだけど2人ともまだ養子いなかったわよね?」 「え、いないけど」 「あのちっさいのをやってみたいの!2人とも、私をおよm・・・じゃない!養子にしなさい!」 「僕は別にいいけど・・・シエは?」 「ん?私も別にいいよ?」 「おk、決まりね!」 「キャラは男?女?」 「サブ垢が空いてるからそこに作るつもりよ!」 「じゃぁ、女垢か」 「職とか容姿とか、リクエストある?仕方がないからあなた達の要望通りにしてあげるわ!」 「じゃぁ、私から一つ。どうせならお揃いの髪型がいいなー」 「おk、じゃぁ2人とも銀髪だから銀髪剣士デフォね!」 「なら僕からもいいかな?職はどうせなら徒歩騎士にしてほしい」 「もうっ、仕方ないわね!徒歩両手騎士にすればいいんでしょ!」 「/うんうん」 「じゃぁ、サクッと作ってきちゃうんだからしっかり面倒見なさいよ!?  べ・・・別に一緒に狩りに行きたいからってわけじゃないんだから!勘違いしないでよね!?」 ----------  そんなやり取りがあり、ノビのまま養子になった彼女は両親公平で剣士時代を駆け抜け数日後、無事騎士となった。 ---------- 「ところでなんで徒歩騎士限定なのよ!理由があったの!?」 「あぁ、それは私も聞きたいかも」 「ははは、決まってるじゃないか。騎士とプリに挟まれるってことは、だ」 「ことは?」 「ftmmとスリットに挟まれるんだぞ!?幸せじゃないか!!ペコに乗ったらftmm堪能できないだろう!!」 「「ちょwwwおまwwww」」 ----------  確認しておくがあいつはネナベである。まぁ、アイツらしいっちゃらしんだけどさ。 ********************************************  そこで私は目を覚ました。窓からはまだ大きな月が夜空に浮かんでいるのが見える。  あの時の軽いノリのおかげで今、私の傍らで眠るレナがいるのだろうか。  それともこちらではまた違ったエピソードがあるのだろうか?  こちらの3人がどういう時間を経て今の関係にあるのかは分からない。  ただひとつだけ。そう、ひとつだけ確信していることがある。  それは・・・・ 『レナが中の人の性格と同じじゃなくてよかった!!!!』