ルーシエ ゲフェン編02 「ママー、はやくー。」  ちょっと待ちなさいお嬢さん。  はぁはぁ・・・体力的には余裕あるはずなのになんでこんなに疲れてるのかな。  ゲフェンタワーを登りながら私は肩で息をしていた。  高さにしてビル10階ほどといったところか。ゲームをしている上ではさほどなかったはずの各階層も、 実際に歩けば広く感じるものである。 「エレベーター的なものはないのかな・・・あるはずもないけど。」  ゲフェンタワーは賊除けのためか入り組んだ構造になっている。それに加えて実際に歩いてみると 結構1フロアに結構広い。 「ママ、何か言った?」 「あ、いや。なんでもない。さー、張り切って登ろうかー。」  Wizになる最大の難関ってやっぱりこの階段を上り下りする体力的なものなんじゃないのか?  そんなことを考えながらこの疲れが階段よりエレベーターやエスカレーターを優先してたあちらの 自分の感覚から来る精神的な疲れだと気づくころ、私たちはようやくウィザードギルドへとたどり着いた。 「ふん!聖職者風情が何をしにきたのよっ!用がないならゲフェンタワーの下で運動でもしてなさいっ!」  入った私たちはいきなり犬に怒鳴られた。あー、そういえばしゃべる犬がいたなぁ。  私がそんなことを考えていると、レナが目を輝かせながらその犬に飛びついた。 「ママ、すごいよ!コボルドじゃないのにこの犬しゃべってる!めがねもかけてるよ!」 「ちょ・・・やめなさいよっ!あんたと遊んでる暇はないのっ!離れなさいっ!!」 「んー、もふもふー♪」    もふもふの毛玉に抱きつくレナはとてもよい表情をしていた。・・・・・・犬は迷惑そうだったが。  私は2人(?)を無視して受付へ。記帳を済ませて本題に入る。 「すみません。お尋ねしたいことがあって来たのですが。」 「聖職者の方が珍しいですね。どのようなご用件でしょうか。」  淡々と話すエルフ耳のギルド関係者。 「少し前にクリムトいうアサシンが訪ねてきませんでしたか?」  連絡のつかない人を探していることを告げ、こちらにも足を運んでいないか確認しにきた、と説明した。 「少々お待ちください。」  受付のギルド関係者は記帳をめくりながらすーっと指でたどっていく。  数ページ見たところで指が止まり、私のほうを向いた。 「ここ数ヶ月の外部からの受付記録を見てみましたがクリムという方の名前はないようですね。」  可能性の問題だったとはいえ、マジシャンギルドに行ったのならこちらにも来ていると踏んだものの 空振りだったらしい。 「やめなさぁぃ!!!毛がっ!毛が抜けるでしょっ!!!」 「あははははーっ。」  振り返るとレナがすごい勢いで犬の頭を撫で回していた。  どこぞの漫画のよーしよしよしよしよしよしよし。と頭を撫で回したあとにご褒美を与える人を思い出した。 伝わりにくいだろうけど。 「そうですか。すみません、お手数をおかけしました。レナー、帰るよー。」 「はーい。」 「ちょっと貴方!子供の躾くらいちゃんとしなさいよね!まったく、最近の親はっ!!!」  犬が何か言っているが無視してポータルを開く。帰りも階段とかやってられない。  そもそも階段は登るときより降りるときのほうが身体に負担を強いるのだ。  精神的には登るより降りるほうが楽だけど。 「失礼しましたー。」  レナがポータルに乗るのを確認してから私もそれに続いた。  後ろから「二度と来るんじゃないわよ!!」という声が聞こえた気がしたが気にしないことにして。  ポータルの先はゲフェンの噴水付近だった。カプラのセーブポイントと言えば分かってもらえるだろうか。  私はカプラさんに頼み数個の青ジェムとりんごジュース2つを倉庫から取り出して近くにあったベンチへと腰掛ける。  レナと2人で並んでジュースを飲みながら、ついため息が出てしまった。   「あーあ、空振りだったかぁ。」 「ん?ママ、何か言った?」 「あ、ううん。なんでもない。」 「それにしてもあのわんちゃんかわいかったなー。また遊びに行きたいなぁ。」 「あはは・・・。」  次行ったら今度は出入り禁止になるかもなーと、内心苦笑いしながら立ち上がり、伸びをする。  私は飲み終わったのだけれどレナはもう少しかかりそうだ。 「次はどこに行ってみようかな。」  ユミルの心臓を有するジュノー、ユミルの心臓を研究しレプリカを作っているシュッツバルド方面。  どちらにしろジュノーからの飛行船経由になるな。リヒならポタがあるけど。  でもまだこの近辺にいるとも考えられるし。うーん、どれにするか迷うZE☆  ―――ぽちゃん。  何かの着水音がする。  それと同時に足元には光とともに巨大な魔方陣が浮かび上がった。  しまった、ここは・・・・。 「レナ!!!」    慌てて手を伸ばし引き寄せようとするも、寸での所で手が届かず私たちはそのまま出現したポータルによって 転送されてしまった。  そう、ゲフェニアへと。 「ん?今もしかして誰かいた?」 「さー。取りあえず行こうか。蝶は忘れてないな?合流するまでは私が残って開けておくから。」 「ん、了解。じゃぁ、私たちはいこっか。」 「一発で合流できればいいんだけどなwww」  私たちがゲフェニアへと飛ばされた後、4人の冒険者がゲフェニアへと進んでいった。