「さぁプニちゃん!今日の獲物はあいつよ!」 最近の一日はホムンクルスとなってしまった私の育成から始まる。 プロンテラ地下下水道から始まり、フェイヨン森にてウルフを・・現在は進化を遂げゲフェンダンジョンで悪魔系モンスター等を 相手取っても十二分に戦い合えるまで成長していた・・・そんな歴戦を潜り抜けてきた中でも 彼女の自慢はまだ一度も私を死なせていない事だ。 「よーし・・・今日はこれくらいにして、、家に戻ろっか〜♪」 彼女の暮らす家はアルデバランのアルケミストギルゴ近くにある風車のついた家だ。 「プニちゃん〜ご飯で来たよー」 普通ホムンクスルの食べ物は低級モンスターがドロップする物が多くそれをそのまま 与える、、というのが主流なのだが彼女の場合は特別だ。 一手間二手間加えなんとも美味しい・・・ただその美味しいと感じるのが私の体が ホムンクルスだから〜・・・なのかもしれないが。。。 「ふふふ〜プニちゃんって美味しそうに食べてくれるから私も作りがいがあるよー。。 そういえば私の知り合いにもプニちゃんみたいにご飯を美味しそうに食べてる人が居るんだ・・・」 そういいながら彼女は頬を赤く染めながら嬉しそうに思い出し笑いを浮かべる・・・ 私はその思い出されてるであろう人物に嫉妬してしまう・・・・・・。 「さて・・・と、プニちゃんお風呂に入ろうっか〜♪」 ・・・またこの嬉しいやら少し困った時間が来てしまった・・・ 私は彼女とお風呂に入る時罪悪感とも思える物に襲われてしまう・・・ それは私の中身が人間だという事はもちろんだが、、彼女の容姿が私がリアルの世界で 片思いをしている入江さんという受付嬢の女性にそっくりなのだ。。 どうやらこの世界の住人の顔、姿は私の知人等が中心で構成されている。 私の分身であるイリアさんの旦那・・・つまり私のプリーストなのだが残念な事に私の顔では無い。。 何を隠そう自分がホムンクルスになった事よりもこれの方がショックが大きかったのはここだけの話だ。 「どしたの?いつもプニちゃん隅っこでもじもじしてるよね・・・あ・・・もしかして湯船につかると解けちゃうのかな。。」 いやいや・・・ お湯をばしゃばしゃかけて何度も洗ったじゃないですか・・貴女がw ときたま見せる天然(?)っぽい所が私は愛おしくもあり少し彼女の将来が不安でもある・・・ まぁ、、ホムンクルスになってしまった自分の将来を心配しろって話なんだが・・・・(汗 「それじゃ・・・今日はそろそろ寝ようか・・・お休み。プニちゃん (ちゅ) 安息!!」 翌日、狩り等で貯まりに貯まった収集品を売りにプロンテラに向かうことになった。 「ぷは〜・・・結構いい稼ぎになったね〜、これもプニちゃんのお陰だね!よーし・・・ 今夜は腕によりをかけてご馳走を作っちゃう・・・ん・・・?なんだか騒がしいね・・・」 突然街中がざわざわどよめき始めた・・・ なんだろう・・・嫌な予感がする。私は彼女を急かす様にカプラさんの元へ向かった。 早く転送で家に帰ろう・・・そして彼女の作った手料理を食べる・・・あれ・・・? 彼女の姿がどこにも見当たらない・・・しまった、、急ぐばかりに気を向けて彼女とはぐれてしまった。 自分が感じた嫌な予感を拭い払うかのように必死に彼女の姿を探した・・・・・・ 嫌な予感が的中した・・・街はモンスターで溢れていた。「古木の枝」モンスターを召還出来るアイテムだ。 そうこうしているうちに私はやっと彼女の姿を見かけた。近くにはいつも相手をして慣れているナイトメアという 馬のような悪魔系モンスターがいたので私はいつものように素早く彼女の元へかけより撃破した。 ・・・・? なんだか様子が可笑しい・・・周囲には無数の高Lvであろう冒険者達の死体が・・・その中に「剣士」だけがぽつんとたたづんでいた。。 「プニ・・・ちゃん・・・」 彼女が震えながら私に声を掛けてきた。 そしてその瞬間私は理解した。その「剣士」の正体。。それは「ドッペルゲンガー」 ゲフェンダンジョンのボスの一人。その人であった。 どうやら折られていたのはただの「古木の枝」だけでは無かったようだ・・・「血の付いた古木の枝」 ボスモンスターをも召還する事が出来るレアアイテム。。 このままでは・・・彼女が殺されてしまう・・・! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ こうなったら最終奥義を使うしかない・・・ ホムンクスルバニルミルトが最終奥義「バイオエクスプロージョン」 自らの命と引き換えに爆発による相手に絶大なダメージを与える特有スキル 今まで貴女と暮らしてこれて楽しかった・・・さようなら・・・ バイオ・エクス・プロージョン!! 「プニちゃーーーーーん!!!!!!」 爆発していく中で私の核がぼろぼろと崩れてながら意識が遠のいていく中で彼女にお礼を囁き続けた・・・ 『イリヤさん・・・今まで有難う』 「え?・・・誰・・・もしかして・・・・プニ・・・ちゃん?」 『え?僕の声が・・・聞こえるの?』 「うん・・・なんだかわからないけど・・・聞こえる・・・・」 『そっか・・・神様がきっと僕に奇跡をくれたんだね イリヤさん・・・いつも美味しいご飯有難う。僕は幸せでした。。』 「そんな事・・・言わないで・・・う・・・うぅ・・・」 『僕は・・・貴女の元に生まれてくる事が出来て本当に良かった。。さようなら・・・・』 『・・・・・・』 「プニちゃん?・・・うぅ・・・プニちゃ・・・ん・・・・・・」 「イリア・・・感傷に浸ってる所悪いが・・・リザレクションホムンクルスを使えばいいんじゃないか?」 そういって声をかけてきたのは旦那でもあるプリーストだった。 「あ・・・そっか!えへへ・・すぐ・・・すぐ生き返らせてあげるからね!すぅ〜・・・・はぁ〜・・・ リザレクション・ホムンクルス!!」 ・・・・・・ 「おーいプニちゃん!こっちおいで!」 ・・・・・・ 「どしたの?プニちゃん・・・・?」 ・・・・・・ 「可笑しいな・・・いつもなら直ぐに寄ってきてくれるのに・・・・」 「あー・・・・そういえばホムンクルスはあの自爆技使ったら親密が最低になるからじゃないか?」 「不機嫌になっちゃってるんだね・・・よーし。今夜は大好物のセルー煮込みで一気に仲良くなっちゃうぞ!」 「はい!お待ちどう〜・・・あれれ?なんで食べてくれないの?うーん・・・・明日アルケミストギルドにいってマスターに聞いてみよう・・・」 「ハァィ!アルケミストマスターデッス!どうしマシタ?マドモアゼル〜イリア」 「実はこの間プロンテラでテロに巻き込まれた時に私を守るためにプニちゃんが自爆攻撃で助けてくれたんですけど・・・ その後大好物のはずのセルー煮込みに一切手を付けてくれなくて・・・普通のセルーなら食べてくれるんですけど・・」 「うーん。。普通のホムンクスルは煮込みセルーだなんて食べたりしないと思いますがねぇ・・・貴女はどうして自爆技を使うと 親密が0になってしまうか知っていマスか?」 「いいえ・・・どうしてなんですか?」 「それは今までの記憶がデリートされてしまうからデス」 「え?」 「つまり核の部分である所が自爆により消失してしまうので同じホムンクルスでも記憶そのものが消えてなくなって・・・ ようは・・・身体機能だけはそのままで人間でいう今まで接してきた主人への感情等がなくなってしまうのデス」 「そ・・・そんな・・・・じゃあ・・・プニちゃんは・・?」 「イェス・・・残念ながら前のようには接してくれないでしょうねぇ」 「嫌・・・嫌だよ・・・そんなの・・・・嫌だぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!!!」 (ツゥー・・・ポタン) 彼女の頬を一筋の涙が伝い・・・ホムンクルスへと・・・・その時、、ホムンクルスを中心に光が包み込んだ・・・・ 『イリアさん・・・泣かないで』 「ハ!・・・プニちゃん?」 『また・・・イリアさんの顔が見ることが出来た・・・・』 「良かった・・・良かったよ・・・プニちゃん!」 「っち・・・」 「誰!?・・・って貴方・・・あれ・・・前からそんな顔だったっけ?」 そこに居たのはイリアさんの旦那のプリーストだったが彼女の様子が少し変だった そしてそれはプリーストの様子も変であることを同時にさしていた。 「ったく・・・そホムンクルスがやっとくたばったと思ったのによぉ・・・」 「ぇ?」 「ッハ・・・まだわからねぇのか?テロを起こしたのはこの俺様よ!その忌々しいホムンクスルを殺す為にな! ・・・・今ここでトドメをさしてやる。今なら自爆すら出来ないだろ?しねぇ!」 「やめて!プニちゃんを虐めないで!!」 「ちぃ・・・邪魔な女め・・・まずは貴様から殺してやる!」 『!やめろ!その人・・・俺の愛する人に手を出すな!!!!』 (ッカ!!) 「ぐぉぉぉ」 ホムンクルスの体を先ほどよりさらに激しい光が包み込む・・・ するとみるみる姿を変えていき・・・プリーストへと姿を変えた! そしてそれとは逆に先ほどまでプリーストの姿をしていたものがみるみる醜いものへと変貌していった。 それは顔のようなものを3つもち身体中がドロドロとただれているホムンクルスバニルミルト亜種の進化後その姿であった。 『くそぉぉぉ・・・人間になれたと・・思ったのに・・・・俺は今までこんな姿なせいか誰にも愛される事がないのはおろか モンスターと間違えられ切り掛かってこられたり子供は俺の姿をみると泣き叫ぶ・・・そして捨てられた俺の前で嬉しそうに ホムンクスルを誕生させようとするお前達の前に出くわし、俺の全魔力を使って傍にいた男プリーストと入れ替わり 女の記憶を操作した・・・そしてホムンクルスとなったお前をいつか排除し俺が本物の人間になる機会を伺って プロのテロが行われている場所に女を誘導し自爆をせざる終えない状況を作り出した・・・・そこまでは良かった・・・ だが・・・まさかホムンクルスの為に涙を流すとは・・・予想外だった・・・それが唯一俺のかけた呪いを解く方法だった』 「お前には同情する・・・だが彼女を泣かせたあげく殺そうとした罪・・・それだけは許せない・・・ 今ここで私が成敗してくれる・・・くらぇ!」 「やめて!!!!!!!!」 「!?どうして止めるんですか?」 「彼のしたことは許せない・・・貴方をホムンクルス変えた事・・・でも・・・人間が彼を見た目で判断した。。それが全ての 始まりだったのよ・・・・・私は見た目なんかで区別したりしない・・・大切なのは・・・・姿じゃない・・・心のよ! たとえどんなに姿を綺麗につくろっていても心が醜ければすぐに化けの皮がはがれてしまうわ・・・・ だから、、おいで?今日から君は私のホムンクルスよ!」 『・・・・・・・ふ・・・ふはは・・・・そんな事言われたの初めてだ・・・だがそういう訳にはいかない・・・ 貴様等が・・・「元の」世界に戻る為には・・・・・・な・・・・』 「な・・・に?」 『俺が貴様等をこちらの世界に連れてきたんだよ・・・・だから元に戻る為には俺を・・・・殺せ!』 「え・・・?なんの事?」 「・・・・実は・・・・」 ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・ 「そう・・・「貴方も」だったのね」 「「貴方も」?どういう・・・」 「私も現実世界からこっちにつれてこられたんだ・・・」 「イリアさんも!?」 「ふふ・・・最初は夢だと思ってたけどね・・・でもプニ太郎との生活が楽しくてずっとこっちでも良い・・・そう思ってた。 ううん・・・今でももう私はこの世界で暮らしていってもいいと思ってる・・・貴方は?」 「私は・・・・元の世界に戻れたら・・・好きな人に告白してみよう・・・・・・・って思ってたけど。。イリアさん・・・ 貴女と居れれば私はもう戻れなくてもいい・・・」 『そういう訳には・・・行かないんだよ・・・元の世界に戻らなければ君達はいずれ元の世界・・いや記憶事態をなくし 空っぽの存在・・・「BOT」へとなってしまう・・・君達をそうする訳にはいかない・・・・俺を始めて認めてくれた・・・・ 君達が殺せないというなら仕方がない・・・・』 そういって亜種バニルミルトが突然走り出し窓の外へとジャンプし飛び降りた そして・・・ 『君達のような人間に出会えてよかった・・・どうか・・・元の世界でも・・・「幸せに」・・・』 (ッカ!!ドゴォォ〜〜ン!!!) 激しい爆発音と共に目の前が激しい光に包まれて私は気を失った・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・ (ピピピ!ピピピ!ガチャ) 「うーん・・・」 時計の針が6時を刺していた・・・ 「おっと会社にいかないと・・・・・・・・」 いつもの満員電車に揺られ会社へと向かい、そしていつもの彼女の笑顔に迎えられた・・・・ 「おはようございます!山本さん♪」 「おはようございます・・・入江さん・・・あの・・・今日仕事終わったらお時間宜しいでしょうか?」 「ぇ・・・?はい・・・わかりました・・・」 「突然こんな事を言って変に思われるかも知れません・・・でも・・・でも言わないとダメな気がして・・・」 「はい・・・ラグナロクの世界での事・・・ですね」 「!?」 「私・・・・イリアです・・・・山本さんは・・・その・・・ラグナロクの中でのプニ・・・ゴホン・・旦那・・ですよね?」 「ぇ・・・もしかしたら・・・とは思いましたが・・・やはり・・・貴女がイリアさんでしたんですね・・・なら・・ 話は早いです。私・・・いえ・・・僕と・・・僕と付き合ってくれませんか?」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「こんな私でよければ・・・お願いします」 「ですよね・・・私なんか・・って・・・えぇ!・・いいんですか?でも入江さんには好きな人がいるのでは・・・?」 「・・・・ホント・・・鈍い人ですね・・・貴方の事・・・ですよ・・・山本さん・・・」 「な!」 「ふふ・・・さぁ・・早く帰って今日も・・・ラグナロクで一緒に狩りにいきましょう♪」 「は・・・はい!」 そして僕達はいつものようにラグナロクをプレイしている・・・・ プリーストからHiプリーストへと・・・アルケミストからクリエイターへと・・・・ そしてその隣には・・・ホムンクルスバニルミルトの亜種と共に仲良く狩りをいつまでもするのであった      −fin−